みわよしこのなんでもブログ : STAP細胞

みわよしこのなんでもブログ

ライター・みわよしこのブログ。猫話、料理の話、車椅子での日常悲喜こもごも、時には真面目な記事も。アフィリエイトの実験場として割り切り、テーマは限定しません。


STAP細胞

知っていることからのアナロジーは危険

先日、発生生物学を専攻していた時期のある知人と会って昼食を共にしました。 
その知人は研究者そのものではありませんでしたが、数年前まで、とある国立大学の発生生物学の研究室に籍を置いて仕事をしていました。 
STAP細胞の一件が、まず研究の中身そのものからして全く理解できない私に、知人は自分のお古の教科書類をくれ たのでした。

知人は、

・STAP細胞研究の背景
・実際には何かが「出来ていた」可能性があり、
 その「出来ていた」背景に何らかの新規性があった可能性もあること
・渦中の研究者O氏は実際には何をした、あるいは何をしなかった可能性があるのか
・一連の騒動の背景には、どこの誰がどういう形で関与している可能性があるのか
・大学院重点化以後、特に「ゆとり」以後の、発生生物学分野での研究者教育の実情
・国立研究機関・国立大学法人での、特許など知的財産権に関する扱い 

などについて、2時間近くにもわたり、丁寧にレクチャーしてくれました。

あまりにも世界が違いすぎて「聞いてびっくり」な多数の話のインパクトを、私は未だ整理できていません。
私は少なくとも、研究といえば半導体しか経験がなく、しかも経験した研究の場が産学官共同プロジェクト・民営化以後のNTT・産学共同研究を積極的に行っていた大学教員の研究室・民間企業。つまり、ほぼ、よくも悪くも「企業文化」しか知らないわけです。
そのアナロジーでSTAP細胞問題を理解しようとして、私は大変な誤解をしてしまいかけていたのだということが良く分かりました。

一番腑に落ちた話は、
「今、研究室で指導らしい指導なんか行われていないし、指導が行える状況にもないから、若い人たちが勝手にオレオレルールを作ってしまう」
という話でした。その「オレオレルール」の延長上に、さまざまな研究上のルール違反を「悪いこととは思っていなかった」という渦中の研究者の発言があるのではないか、とも。 
その話を聞いて、驚き、かつ、ここ5年間くらいで若い人との間にあった不愉快な出来事を理解できる気がしました。不愉快であったり危険を被ったりしたこと自体は変わりません。相手がそのようなことを、まったく悪気なく行ってしまうことの背景が、おぼろげながら理解できてきたというだけの話です。しかしその理解は、若年層に対する不気味感や恐怖を少しだけ和らげてくれるように思えました。

「最近の若いものは」と言い出したら年寄りの証かもしれません。40代に入ったばかりの知人と、50代に入ったばかりの私が、そんなふうに若年層の生育・教育環境を話題にしていたということ自体が、知人も私も年寄りになったということなのかもしれません。
自分の知っている「若い時」「若い人」からのアナロジーで現在の若年層を考えること自体が、すでに多大な危険性を含んでいるようです。 知人の話を聞いて、そのことだけは良く分かりました。
私は幸いにして、子どもがいません。教育職についているわけでもありません。若年層の行動に対し、自分自身が責任を問われる立場にはありません。
当分は、若年層に対して「なるべく近寄らない」「なるべく接触しない」「慎重に観察する」という態度でいようと思います。
そのうちに、互いに安全な付き合い方を見つけることくらいなら、可能かもしれません。
 

早稲田大学理工学部に関する2つの強烈な経験

私が学部と修士でお世話になった東京理科大(神楽坂キャンパス)と、早稲田大学理工学部は、まあ距離的には近いといえば近い距離にありました。
ちなみに、東京理科大野田キャンパスでささやかれていた冗談に
「飯田橋駅前の交番で『理科大どこですか』と聞いて、指差された方向に進んでいった。進めども進めども大学らしいものは見えてこない。そのうちに早稲田大学に着いた」
というものがありました。雑居ビルの集まりに見えてしまう理科大神楽坂キャンパスをからかっていたわけです。
もちろん逆襲もありました。
「野田キャンパスのトイレには水とお湯ともう一つ蛇口があって、ひねったら醤油が出てくる」
とか
「そこの古利根川を醤油が流れてる」
とか。

さて。私には、早稲田大学理工学部に関する、2つの強烈な経験があります。
特に、早稲田理工の出身者に親しくしている人がいるわけでもない私は、この2つの経験から、私は「子どもが早稲田理工に行ってます」という親を警戒するようになりました。

その一
1985年ごろのことです。
仕事帰りの私が、飯田橋の蕎麦屋「翁」で夕食に蕎麦を食べていたところ、サラリーマン二人連れと相席になりました。
二人連れは晩酌をはじめました。そして、一人が私にからみはじめました。
「理科大の女の子は乱れてるんでしょ? 男選び放題で」
とか。
そのオヤジの息子は早稲田大学理工学部に入学したところなのだそうでした。その自慢話をさんざん聞かされた後、私はビールを勧められました。でも、私はそれから大学で授業を受けるのです。
「これから授業ですから」
と断ると、
「そんなことでは世間で許されない」
と説教されました。
私は、からむオヤジをふりほどき、やっとのことで席を立ちました。お店の人が恐縮して、蕎麦代を無料にしてくれました。

その二
私が会社員だったころ、結婚を考えて付き合っていた同僚がいました。
1997年、相手のご両親に挨拶しました。
ご両親はどちらも中卒で、大変な苦労をして同僚と妹さんを育てられ、同僚を福岡県立の進学校から早稲田理工へと進学させたのでした。
最初の一回や二回、お父様の
「息子はT高校から早稲田大学理工学部に」
という話は、
「ああ、本当に嬉しかったんだなあ」
と共感しながら聞くことが出来ました。しかしその後何百回聞くことになったかわかりません。壊れたレコードみたいに。苦痛でしかありませんでした。
だいたい、早稲田大学理工学部キャンパスに行って若い人に石を投げれば、ほぼ100%が早稲田理工の学生さんたちにに当たるでしょう。
ご両親にとっては特別なできごとでも、研究職であった同僚や私にとっては、ありふれた学歴の一つです。
しかし、そのことをご両親にご理解いただくことは可能とは思えませんでした。
そのうちにご両親の態度には、
「自分たちは中卒であるが、早稲田大学理工学部を卒業した息子の両親として、息子より上の学歴を持つこの女をヨメとして虐げることができる」
という喜びが感じられるようになりました。私は露骨にヨメ扱いされ、職業継続に関する協力は何一つ受けませんでした。妨害ならされましたけど。
同僚と私、それから二匹の猫で作っていた当時の家庭は、いつも人間同士の争いが耐えませんでした。ときに仲裁を試み、ときに弟猫の悠(1998生-2013歿)を安全な場所に連れて行ってなだめてくれていた姉猫の摩耶(1997生)に、今でも感謝しています。摩耶、ありがとう。
1999年、同僚の方から「終わりにしよう」と切りだされました。望むところでした。私は別れる手続きを嬉々として始めました。すると同僚は顔色を変えました。間もなく、周囲の人々多数から、私は「離婚しないように」という圧力をかけられるようになりました。同僚が依頼したようです。この時に私に圧力をかけた人々を、私は未だに許していません。なかには、未だに西荻窪地域コミュニティで顔を合わせる機会のある人もいます。顔を合わせれば挨拶くらいはします。でも許していません。それから、「この人、男より猫の方がいいんだよ」と言った酒屋店主。ヒモ男より猫のほうがいいに決まってるじゃないですか。
当時の同僚は会社に出勤できず引きこもっていました。文筆業で収入を得て一家の家計を支えていたのは私でした。同僚は、仕事があって活躍できている私に嫉妬をぶつけました。周囲の人々は、「夫を立てないから夫がダメになる」「夫に優しくしないから夫がダメになる」と私に説教しました。ヒモを立てろと言われてもねえ。
そのうちに同僚は、酒と薬でラリって刃物を振り回したりするようにまでなりました。猫たちも私も傷つかなかったのは不幸中の幸いでした。そんな状況でも、私の父親は「食事を作って食べさせてやらないからいけない」とか私に言っていましたよ。刃物まで出てきているというのを知ってはいただろうと思うのですが。
私は苦心の末、2001年に同僚と別れることに成功しました。

そして2013年のことです。
企業時代に9年間、私の一次上司(現・産総研)だった人物の息子さんが、日比谷高校から早稲田理工に進学していた事を知りました。
私はこの息子さんに、いつか、「あなたのお父さんが私や他の何人かの人に何をしていたか」を聞いて欲しいと思っていました。この人物は、いわゆる「クラッシャー上司」でした。何人もの人が潰され、会社を追われました。真面目で優秀な中堅だった20代男性が精神を病まされ、その後定職にもつけないままであったり。30代で妻子との生活のために家を買ったばかりの時期を狙って集団イジメを仕掛けられ、遠隔地への転勤を強いられた男性もいました。そして私も凄まじいパワハラに遭いました。
私はいつか、この息子さんに、私が、同僚たちが、お父さんに何をされたかを話したかったのです。お父さんが会社で話していた子煩悩ぶりがどのようなものであったかとともに。
しかし、そう思っているうちに、今回のSTAP細胞騒動が起こりました。早稲田理工では当たり前なのかどうかまでは分かりませんが、かなり大規模に、論文等でのコピペが行われていたという話に接して呆れました。大学で特別な倫理教育を施さなければ防止できないことであるとも思えませんが。
私は、この息子さんに対して、
「ああ、早稲田理工だったら、言ってもきっと何も通じない。倫理的であることなんか求めてもムダ、ましてやあのお父さんの息子なんだし」
と考えることにしました。そして、この息子さんに将来「あなたのお父さんは……」と話す計画は、実行しないことにしました。本気で、早稲田理工に倫理を求めてはならないと考えているわけではありません。ただ、
「30年近く前の、ご本人には責任のとりようのないお父さんの行状を息子に話す」
という生産性ゼロの行為の準備をやめるきっかけと理由を、私はどこかで探していました。今回のSTAP細胞騒動は、その格好の理由を提供してくれた、というわけです。そして、「特別な倫理教育が必要なわけでもないはずのことを早稲田理工では博士課程の院生までやらかしてしまう」ということの理由を「早稲田理工に子どもを行かせる親にそもそも問題が」に求めておけば、ひと通りのツジツマは合います。まあ、私自身、本気で「早稲田理工に子どもを行かせる親に問題が」と思っているわけではないのですけれども。

現在、早稲田理工にはあまり良いイメージを持っていない私ですが、私には早稲田大学(元)教職員の友人知人が何人もいます。 でも、その方々は、たまたま(元)勤務先が早稲田大学というだけ。勤務先が早稲田大学だからお付き合いしているわけではありません。みんな優秀で良心的な方々です。
STAP細胞騒動は、いい機会だったと思います。
「ますます、大学のハクなどに惑わされずに人物を見なくちゃね」
と肝に銘じる機会になりました。
とりあえず、子どもが早稲田理工に行っているという親御さんに対しては、引き続き警戒を続ける必要を感じています。たった2例・3人ではありますけれども、子どもの通っている大学のハクの使い道を思いっきり勘違いした親御さんを見ていますから。そういう親御さんでないことが明確になるまで距離を縮めないようにしないとね。

広報部門のさまざまな形

STAP細胞の一件で、理化学研究所の広報体制に疑問が集まっているようです。
企業だったら、確かに広報部門を通さない広報っていうのはありえません。
でも研究機関は企業ではありません。さらに、研究機関ごとに体制が異なります。一つの研究機関の中に、性格の異なる組織が数多く存在する場合もあります。

研究機関の広報が外から見て非常にわかりにくい存在であることは間違いないかと思います。
といいますか、「研究機関の広報」とくくることのできる存在は、あるのでしょうか? 
同じ独立行政法人の研究機関でも、広報の位置づけや役割や体制は、まちまちなのではないかと思います。
理研の今回のSTAP細胞騒動については、広報がどういう役割をふだん担っており、位置づけがどうなっていたのかを最初に知りたいです。

STAP細胞の一件に関しては、私はあの特許だけは、体制がどうなっているのかと関係なく「なんなんだ?」と思いますよ。一言でいえば
「弁理士さん、中身読んだ?」
という疑問を感じています。他者の知財権を侵害していないかどうかって、弁理士さんは非常に気にするところだと思いますが、今はそうではないんでしょうか?
特許として審査を通過して登録されてしまったことに関しては、登録時チェックって基本的には形式審査だけ(これは日本でもそう)、明らかにおかしな内容だったらはじく、程度のものなのですから、ありうることではないかと思います。

まずは、理化学研究所の広報が、全体の中で、どういう位置づけにあったのか。
ふだんの業務の中心はどのようなことがらだったのか。
スタッフは何人いるのか。
そんなことから、少しずつ理解を及ぼしていければと考えています。 

「前略、小保方晴子さま」

本エントリーは約2万件(2014年3月20日現在)のアクセスをいただき、同時に予想外のアフィリエイト収入につながりました。
このことに関する当方の考えは、「2014年3月のアフィリエイト収入に関して」をご参照ください(2014年3月20日記)。


2014年3月17日、メールマガジン「サイエンス・コミュニケーション・ニュース」 No. 548 STAP細胞特集に、小保方晴子さんへのメッセージを書かせていただきました。発行者のご了承のもと、こちらにも転載いたします。
このメールマガジンは、科学と社会・倫理・責任などを考えるのに必要な情報が毎回分かりやすくまとめられており、非常に有用だと思います。しかし残念ながら、研究者・科学コミュニケーションを職業とする方々以外には、それほど知られていないのが現状です。
STAP細胞の一件で科学界に関心を持たれた方々に、自信を持ってお勧めできるメルマガです。ぜひ、ご購読をご検討ください。 

以下、私が書かせていただいた、小保方晴子さんへのメッセージです。
私は小保方さんと全く面識がありませんし、バイオテクノロジーとの接点も非常に少ない人間です。さらに現在、私はどのような意味でも「科学者」ではありません。当事者ではなく、当事者に近い立場にもありません。なので、当事者としての感覚はありません。ただの傍観者の一人です。
しかし傍観者の一人として、まことに心を痛めております。
もちろん、小保方さんが多大な問題を起こしてしまわれたことは事実です。周囲の教育体制・研究体制の問題はそれはそれとして、起こしてしまった問題に対する責任はお取りになる必要があります。
でも今、起こしてしまった問題に対して小保方さんやご家族、それからお身近な方々、同じ理化学研究所にいるというだけの方々など「つながり」ある方々が、なぜこのような行き過ぎた社会的制裁や「面倒」に巻き込まれなくてはならないのでしょうか。
私は、大変な苦境にある小保方さんを、なんとか、人としてすこしでも勇気づけることができればと心から思い、このメッセージを書きました。
ネット検索を通じて、あるいは人づてにでも、ご本人のお目に止まる万一の可能性に心から期待しています。

 前略、小保方晴子さま

いきなり失礼します。
睡眠は取れていますか? 食事は少しでも摂れていますか? 
ちゃんとバスタブを使って入浴し、身体の一部だけでもリラックスさせることはできて
いますか?
お身近に、生活レベルの維持を手伝ってくれる誰かはいますか? ご家族でも彼氏
でも。安心して話を聞いてもらえる誰かはいますか?

自己紹介が遅れました。
私は、今年50歳のオバハンです。
前世紀のことになりますが、物理学で修士号を取得したあと、ある企業の事業部付
属の研究部門で、半導体物理の研究に従事していた時期があります。
本名の「三輪佳子」でWeb検索していただけば、私のささやかな実績を少しだけ見つ
けていただけるかもしれません。
現在の私は、本名のひらがな表記「みわよしこ」をペンネームとして、ライター稼業を
生業としています。「なぜ、ひらがななの?」と思われますか? 本名があまりにも字
面の固い字で、しかも最初から「みわよしこ」と読んでくださる方が滅多にいないから
なのですよ。企業勤務のかたわらライター稼業をはじめたころ、あまりにも忙しくてペ
ンネームを考えるヒマがなく、深く考えずに「みわよしこ」名義で記事を送り出しはじめ
ました。それから、もう17年になろうとしています。
もと低レベル研究者だった私、現在も科学や技術についての関心は失っておらず、
記事や書籍を送り出し続けています。
でも、この2年ほど、仕事の中心は社会保障、特に生活保護問題です。科学や技術
が人間の世界を少しでも「良く」するためには、人間の生存という基盤が必要ですか
ら。
その基盤を守らなくてはという思いから、生活保護問題について、記事多数を書き続
けています。関連著書は1冊、関連記事は100本を超えているかと思います。
私は、危機に瀕する生活保護制度を守ること・日本のすべての人々の生存の基盤を
守ることの自然な延長として、今、貴女に、この手紙を書いています。
もしや貴女のお目に入ることがあればという、かすかな期待をもって。

現在の私は、どのような意味でも「科学者」ではありませんが、科学を根として育った
者です。
そして、同じように科学の根から生まれ育ちつつあったはずの貴女が現在置かれて
いる状況に、心を痛めています。
まだ人生経験の浅い若い女性が、こんなふうにメディアで、世間で騒がれてしまっ
て。
「身から出た錆」ではあるとは言え、いや、もしかすれば「身から出た錆」であればあ
るほど、お辛いことでしょう。

私、バイオテクノロジーは「全く」といってよいほど分かりません。
だから、貴女のSTAP細胞が何なのか、出来たのか出来ていなかったのか、正直なと
ころよく分かりません。データや根拠を示されても、自分で判断することはできませ
ん。
貴女の論文を読んで理解することもできません。今、「分からない」では済まないと
思って、少しずつ勉強を始めてはいますけれども。
ただ、盗用・剽窃と指摘されていることがらは、専門が全く違っても、科学の素養がな
くても理解できることです。
私も、「なんとお粗末な」と呆れましたよ。
それから「なんでこんなことが?」と首を傾げました。
私のささやかな研究キャリアは、ほぼ全部が企業の中でのことでした。
「企業人だからモラルが高い」などということは断じてありませんけれども、あのような
「コピペ」がそのまま表に出てしまうことは、企業の研究部門では、まず考えられない
ことなのです。
少なくとも論文は、一次上司・二次上司・部門長が「チラ見」程度にでも目を通しま
す。ついでにいうと、まともな英語を書ける人はそうそういませんから、英語の論文で
あれば、英語のお得意な方にチェックをお願いすることになります。内容が全く分か
らない方に英語だけのチェックをお願いするよりは、若干でも内容をご理解いただけ
る方にお願いした方がよいと思うのが、自然な心情でしょう。というわけで、ふだん協
力関係のある他部署の方にお願いすることになります。だから、盗用・剽窃なんか最
初からできませんし、やる気にもならないのですよ。外に出てしまう前に社内でバレ
て、大変恥ずかしい思いをした上に、研究人生おしまいになるわけですから。
特許であれば、さらに知財部門の担当者・管理職、さらに外部の弁理士がチェックす
ることになります。ご存知でしょうけれども、国内でも、弁理士さんをお願いして特許
を成立させるには100万円程度は必要です(出願だけなら30万円程度で済みます
が、出願だけで成立するわけではありません)。国外出願なら、少なくとも300万円程
度は必要なのではないでしょうか。現在の相場はよく知らないんですけど。企業に
とっても小さな出費ではありません。そもそも、特許出願の多くは、「費用対効果」とい
う面から厳しく見られているものです。本当に利益につながる特許など、ごく一部です
から。一方で、特許件数は企業の技術力の指標の一つですから、将来、利益に結び
つく可能性が低くても出願はさせてもらえる場合も多いです。ただでさえ費用がかか
るだけで利益に結びつきにくいのが特許です。まして、成立させた後で企業イメージ
暴落につながるようなことがあっては困ります。だから、論文以上に厳しくチェックさ
れるのですよ。本当にオリジナルなのか。類似の先行特許との違いは何なのか。他
社・他者の知的財産権を侵害していないか。新規性や実現可能性は、どの程度ある
のか。ときには、問題が何もなくても出願できないこともあります。「予算が足りない」
といった理由によって。
私は、貴女の特許を拝見して、「HC1」に大きな衝撃を受けました。関係した誰もが気
付かなかったなんて。とても考えられません。なぜ、そんなことが起こってしまうので
しょうか?

いずれにしても、貴女は科学者として、なさったことの責任は取らなくてはなりませ
ん。
貴女の周囲の研究環境・教育環境がどのようなものであったのか、そこに組織として
の問題・体制上の問題がなかったかどうかは、これから大いに考える必要のあること
だと思います。そしてどこにどのような問題があろうと、貴女が一人の科学者としてな
さったことは免責されませんし、免責されるべきでもありません。
でも、「責任を取る」とはどういうことでしょうか?
貴女は何をなされば、責任を取ったことになるのでしょうか? 
既になされた、あるいはなされようとしていると伝えられていることは、既発表論文の
取り下げに博士論文の取り下げ。それから、充分どころか、むしろ度の過ぎた社会的
制裁。
足りていないものは、貴女自身による充分な説明です。
でも、それはどうしても、今やらなくてはならないことなのでしょうか? 
今、充分におやりになることは可能でしょうか?

貴女はこの一ヶ月ほど、大騒動の渦中にあって、心身ともお疲れになっているのでは
ないですか? 身体のどこかが痛んではいませんか? これだけのことがあって「全
く何ともない」ということはないかと思います。少なくとも、心身とも極度の疲労状態に
あるのではないですか?
その前提のもと、「今は休養なさっては?」と申し上げます。
少なくとも、ネットと世間からは距離を置き、ニュースチェックもなさらないことをお勧
めします。今後当分の間、「充分に回復した」と自他ともにお認めになれる状態にな
るまでは。
しかし、現在の貴女にとっては、どこならば安心して休養できるのかが問題でしょう。
私は、病院の中をお勧めします。つまり入院ということです。
まとまった期間の休養を病院の中でなさりたいのでしたら、精神科病院も選択肢の
一つです。現在、精神科以外では、特段の事情がない限り、月単位の入院をするこ
とは不可能に近くなっています。精神科だけが例外です。そのことの良し悪しは別と
して。
病院には患者のプライバシーを守る義務があります。どんなに激しい取材攻勢が行
われたとしても。どうぞ、守られた環境で、充分に休養なさってください。
とはいえ、病院は「ピンキリ」、特に精神科病院は激しく「ピンキリ」です。もし入院を考
えるのであれば、事情にお詳しい方に、休養の場としてふさわしい病院を紹介してい
ただいてくださいね。ご勤務先の理化学研究所から産業医を紹介していただき、その
方に病院を紹介していただくのも一つの方法です(とはいえ、組織の都合に沿って患
者を追い込むような産業医・医療従事者が「全くいない」とも言い切れないのです。ど
うか、良いご縁、少なくとも貴女の害にならないご縁がありますように……)。

貴女がもし「入院」という選択をなさったら、
「病院に逃げ込んだ」
「病気を逃げの口実に使った」
と、数多くの人々が言い立てることでしょう。
でも、そんな意見に耳を貸す必要はありません。
少なくとも「自分には休養が必要だ」と貴女が思うのならば、貴女は休養すべきです。
他の誰も、その権利を侵害することはできません。病院は、休養のための良い選択
肢の一つです。
もしも入院、あるいは何らかの形で身を隠して休養するという選択をなさるのでした
ら、ご勤務先の理化学研究所と若山先生からは、ご家族・あるいは弁護士などの代
理人を通じてでも、連絡が取れるようにしておいてください。それで最低限の「浮世の
義理」は立ちます。

今、貴女は、すべてを失ってしまったかのように思っておられるかもしれません。
科学者としては、もしかすると、すべてを失ったも同然かもしれません。
でも、まだ30歳、まだまだ人生これからではありませんか。
とにかく、生き延びてください。
今は、ご自身の心身の健康を守ること、生き続けることを最優先なさってください。
生きることは、ありとあらゆる機会の源なのですから。

読んでいただければ、それだけで十分です。お返事は要りません。
もし万一、私に連絡したいとお思いになっても、決して連絡はなさらないでください。
私のメールアドレスやSNSのアカウントは、ペンネームの「みわよしこ」でも本名の「三
輪佳子」でも、簡単に見つけられます。
でも、今の貴女にとってメディア関係者と接触することは、脅威を増やすだけです。
フリーランスの私といえども、同じこと。
決して、連絡はなさらないでくださいね。

小保方さん。
どうか、生き延びてください。
時間はかかっても、元気になってください。
元気になってから、果たすべき責任を果たしてください。
そして、その先の人生を切り開いていってください。
私は貴女のことを、ずっとずっと、応援しつづけますから。
科学の根から育ちつつある若い女性を、科学の根から育ったオバハンとして、応援し続けますから。

                     2014年3月16日 みわ よしこ 拝


追伸

以下、余計なお世話ですが、いくつかの情報源です。

●安心して話を聞いてもらうために

・神戸いのちの電話(本当に、話を聞いてくれるだけですが)
電話 078-371-4343
月〜金曜日8:30~21:30 (第4金曜日は翌土曜日8:30まで)
土曜日8:30~日曜日16:30(夜通し電話を受けつけてくれる可能性あり←未確認ですが)
祝日 9:30~16:30

●悩み事・精神的な苦しみについて、具体的なアドバイスを受けるために

・神戸市こころの健康センター
http://www.city.kobe.lg.jp/life/health/kokoro/

●貴女やご家族が受けている、報道被害といってもよい状況に対して

兵庫県弁護会のWebページ内に、適切な相談窓口を見つけられませんでした。
高齢者や障害者に対する「権利擁護」が最も近いのかもしれないと思います。
http://www.hyogoben.or.jp/konnatoki/index-07.html

最後に、オバハンの本物の、余計な余計なお世話です。
今、もしかすると、宗教が少しくらい役に立つかもしれません。
「人間を救いたいと望んでいる存在がいる」
と仮定することができれば、希望は少しだけ見つけやすくなるかもしれません。科学
的な根拠など、何もないのですが。
というわけで、わりあいよく知っているキリスト教と、ちょっとくらい馴染みのある仏教
について、私自身が信頼できると思っている本・機関の情報を追加しておきます。

宗教に関する「余計なお世話」を付け加えるのは、窮地に陥ったことをきっかけとし
て、カルト宗教・怪しい新興宗教・なぜか大変な出費を強いられる宗教などに引きず
り込まれる方が多いからです。
どうか充分な賢明さをもって、そういう自称宗教には付け込まれないようになさってく
ださいね。

では情報です。
私は受洗していませんがキリスト者(プロテスタント)なので、そちらに偏ってしまうこ
とをお許しください。

●お勧めできる本

・「なぜ私だけが苦しむのか-現代のヨブ記」
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4006031645
・聖書(新共同訳・和英対照)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4820212419/
・歎異抄
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4044014019/
・「大悲 風のごとく - 現在に生きる仏教」
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4480032541/

●お勧めできる機関

・もしキリスト教に関心を持たれたら

キリスト教は、文字だけで理解することが非常に難しい宗教です。
キリスト教を理解するには、よい教会、よい指導者とのつながりが不可欠だと思いま
す。
しかし、教会コミュニティも指導者もさまざまです。人間であり、人間の社会なのです
から。
教会の礼拝は基本的に誰にでも開かれていますが、現在のような状況にある貴女
が、普段の付き合いもないのに教会に近づくことは、大きなリスクです。
もし「キリスト教に触れてみたい」と思われるのでしたら、全国団体に連絡してみてく
ださい。そして、
「牧師または神父と呼ばれる指導者の方と、一対一でお話をさせてほしい」
と相談してみてください。
指導者と一対一でお話をなさるのならば、礼拝に参加するより、ずっと安全でしょう。
そして、その機会は用意していただけるのではないかと思います。
困難な状況に陥った方々の再出発を支援することは、牧師さんや神父さんたちの日
常的なお仕事の一つです。人にもよりますけれども。

日本基督教団(プロテスタント)
http://uccj.org/
カトリック中央協議会(カトリック)
http://www.cbcj.catholic.jp/jpn/

・もし仏教に関心を持たれたら

すみません。私は日本人でありながら、キリスト教以上に仏教のことを知らないんで
す。ただ、親鸞の
「善人なおもて往生を遂ぐ、いわんや悪人をや」
という教えは、もしかすると、貴女の救いになるのではないかと思います。
日本に二つある総本山に問い合わせれば、お近くの信頼できる寺院や聖職者を教え
ていただけるのではないかと思います。くれぐれも、親鸞や歎異抄を表看板にした怪
しい団体には近寄られないようにしてくださいね。

西本願寺
http://www.hongwanji.or.jp/
東本願寺
http://www.higashihonganji.or.jp/
 
それでは、ここで本当におしまいにします。
貴女の笑顔をもう一度見られる将来を、心から待ち望みつつ。


紹介した書籍を「読んでみようかな」と思われた方々のために、画像も貼っておきます。

ユダヤ教の指導者でいらした方が、ご自分の経験された苦難やホロコーストに寄せて、神や信仰について語る書籍です。何度も「神も仏もあるものか(とは書いてありませんが)」とお思いになるものの、神・信仰・そして生きることそのものへの意味を再発見していかれます。苦境にある方への「イチオシ」です。



変なキリスト教解説書を読むくらいなら、聖書そのものをどうぞ。 全部読むのは大変ですけど。
「どこか1箇所だけ」なら新約聖書に4つある福音書のどれかを。
「あと2箇所くらい読める」というのでしたら、旧約聖書の創世記とヨブ記を。



歎異抄。
「現代語訳いらない」というのでしたら青空文庫……と思ったんですが、青空文庫にはないんですね、原文は。



紀野一義さんのご著書は、概ねどれもお勧めできます。

小保方晴子さんについて:話題にすることをやめよう

小保方晴子さんの書かれた論文等で剽窃が行われたこと、ほぼ間違いないようです。
研究倫理にもとるとかどうとか言う以前に、オバハン元低レベル研究者である私は、「なんとお粗末な」と口あんぐりです。
STAP細胞についても、さまざまな疑惑が持たれています。 ただ、私があまりにも門外漢すぎるため、内容がよくわかりません。生物学に詳しい友人たちに「教えて」とおねだりして、少しずつ教えてもらっている段階です(「幹細胞て何?」「それって、細胞の中にあるもの? 外にあるもの?」から説明するはめになった友人の皆さん、お手数おかけします)。
政府も、理研に調査を要請したようです(こちらの日経報道など)。 正直
「なんで今ごろ? なんで政府が? 」
と思います。「尻馬に乗る」という言い回しさえ思い浮かべてしまいます。

STAP細胞自体が出来たのか出来ていなかったのか、何か他の細胞との取り違えじゃないのか、実験手順に不正があったんじゃないか……といったこととは無関係に、小保方さんは研究者としては再浮上できないでしょう。
やってしまったことに対する社会的制裁としては充分、いや、もう充分以上かと思われます。
いずれ、科学界でも調査と制裁が行われることでしょう。

だから今は、話題にすることをやめませんか? 
居酒屋でも井戸端でも床屋でもSNSでも。
研究不正はいけません。「不正」なんですから。
必要以上の社会的制裁を「世間」が加えることは、「不正」とは呼ばれませんが、正しい行為とはいえないでしょう。
研究に倫理を求め、研究者に良心を求めるならば、求める側が倫理的かつ良心的であるべきではないでしょうか。

だから、当面、小保方さんを話題にすることはやめませんか?
小保方さんについて、口をつぐみませんか?
早晩、理研・早稲田大学などが調査を行い、適切な制裁が行われるかと思います。
小保方さんが研究の世界から追放されるのは、仕方ないことです。といいますか、ご自分の行為がご自分にふりかかってくるのは、大人として、一人の研究者として、当然のことでしょう。
でも、小保方さんを、ありとあらゆる場で生きていけない人にしてはいけません。 
研究の世界では生きていけないとしても、社会のどこかに居場所を作ってリスタートを支援すること、社会の義務ではないですか?

とりあえず私、自分自身の「倫理」「良心」の現れとして、当面の間、小保方さんを話題にすることはやめます。
STAP細胞に関する「あれは何?」は、引き続きぼちぼち勉強しますけど。 
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