私は、旅先の市場やマーケットで現地の食べ物を購入して料理するのが大好きです。
そもそも滞在コスト削減のために、キッチンつきのドミトリーなどを選ぶことが多いのでもあります。
料理が趣味であったり、コスト削減のために自炊を余儀なくされているのでなくても、
ちょっとした調理器具は持っておいたほうが便利です。
何がどれだけあれば充分でしょうか?

というわけで、今回は旅行時の調理器具についてまとめてみます。
過去記事
・旅行の荷物、必要かつ最低限とは (0)総論 荷物の分類

・旅行の荷物、必要かつ最低限とは (1)必需品、日常生活用品
もご参照ください。

2. 調理用具
2-1 調味料・小物

・最低限持っておくべき調味料

食塩(できれば分包)、砂糖(分包)、粉末無水クエン酸(できれば分包)

調味料として使えるのはもちろんのこと、食塩と砂糖とクエン酸があれば、脱水しそうな時に経口補水液を作って飲むことができます。また、疲労時のエネルギー補給にも役立ちます。
食塩の分包製品は食品業界向けに存在しますが、一般的には入手困難です。下の写真のような小型のファスナーつきポリ袋に自分で分包(大さじ一杯・小さじ一杯など使いやすい量で)します。50 g 程度あれば充分かと思われます。
もちろん、日本専売公社の食塩でなくてはならない理由はありません。どうぞ、藻塩でも粗塩でも岩塩でもなんでも、お好みの塩を。
食塩が販売されていない国や地域はありません。食塩がないと人間死にますから。でも、100 g 以下の少量をリーズナブルに入手することが可能とは限りません。
それに、体調が悪いと感じている時に「買い物に出かけて食塩を調達する」と「さっさと経口補水液を作って飲んで寝る」のどちらの行動を取りたいですか? 
というわけで、使いやすいポーションで持っていくことを強くお勧めします。



砂糖はスティックシュガーを持っていきます。先進国の都市部に出かけるのであれば、3~5 g のスティックシュガーが10本ほどあれば充分でしょう。目安としては、経口補水液1リットル分。
砂糖は、コーヒーショップでもハンバーガーショップでも、簡単に無料で調達できます。大量に持っていく必要はないでしょう。何回も経口補水液を作って飲まなくてはならない事態に陥りそうだったら、こじれる前に病院に行くべきです。

粉末無水クエン酸は、どこの薬局でも安価に売られていますし、分包タイプのものもあります。10 g 程度あれば充分でしょう。レモンやライムが入手できるのならば、出番はないわけですから。
一応、食品添加物グレードのものをお勧めしておきます。私自身はこだわってませんけど。


参考:一般的な経口補水液のレシピ
砂糖40g(上白糖で大さじ4.5杯)、塩3g(小さじ0.5杯)を水(できれば湯冷まし)1リットルに溶かす。柑橘類の果汁やクエン酸で酸味をつけてもよい。保存性はないので、作ったらさっさと飲むこと。

・あれば役に立つ調味料

・タマノイ酢「すしのこ」

旅行先の自炊では、生野菜を継続的に摂取できる環境づくりに苦労する場面が多いです。
生で食べられる野菜を適宜刻み、「すしのこ」をまぶしてポリ袋に入れて封をしておけば、気温にもよりますが、数日の保存に耐える簡易ピクルスができます。
ちょっと甘すぎるところが難なのですけど、こと旅行先では食味より防腐効果を優先してもよいかと。


・ジンジャー粉末

「おや、風邪気味かな?」と思った時、温かい飲み物やスープにジンジャー粉末を入れて飲み、身体を冷やさないように寝て予防。



・小道具類

・ポリ袋

日本では、どこのスーパーでも薄手の透明ポリ袋を無料で調達できますが、海外ではそんなことはありえないと考えておいたほうがよいでしょう。
もちろんスーパー等で購入することは可能なのですが、最小単位が100枚であったりします。
かさばるものではないので、10枚ほど持っていきましょう。
お湯さえ沸かせれば、料理はできます。
「ポリ袋に調味した食材を入れて袋ごと煮る」という方法をフル活用すれば、「一つの鍋で同時に数日分のおかずを作る」といったことも可能です。

・ファスナーつきポリ袋

「ジップロック」のようなポリ袋が大小合わせて10枚ほどあると重宝します。
できれば、底にマチがあって自立するタイプを。


・ペーパータオル・アルミホイル

ペーパータオルやアルミホイルを現地で必要な量だけ調達するのは、容易でありません。しかも、代替できるものはありません。
ふだん使っているものを、使いやすいサイズにカットして10~20枚程度持っていきます。特にペーパータオルは濡れたら用をなさないので、ファスナー付きポリ袋に入れておくなどします。

・大型の「だしパック」

日本以外の国で販売されているのを見たことがありません。
「お茶や水出しコーヒーを大量に作って、ポットに入れて持って行きたい」
「通常はザルを使って行うような湯通し・湯がきをしたい」
「お湯やスープの中で、小さな食材を飛び散らせずに加熱したい」
など、様々な場面で威力を発揮してくれます。
大は小を兼ねるので、大型のものを10枚程度持っていきます。

2-2 食器

・割り箸

箸で食事する文化のない地域では、当然ながら調達が極めて困難です。
日本人としては、ちょっとした調理でも箸がなくては不便を感じる場面も多いでしょう。
3膳ほど持っていきましょう。
スプーン・フォークその他現地の食器は、現地や機内で使い捨てのものを容易に調達できるので、この「必要かつ最低限」のリストには含めていません。


・飲料用ポット

さまざまなペットボトル入り飲料を安価にコンビニで調達でき、どこの上水道の水も安全に飲めてそこそこ美味なのは、日本の特殊事情というべきです。
旅行先では、飲める水または飲料を持ち歩く習慣をつけておいたほうが安全です。
みわよしこ、日常の愛用品。

2-3 調理器具

・ヒーター(投げ込み式)+手元スイッチ

注意:
特に金属容器で投げ込み式ヒーターを使う際には、容器に発熱部分が直接接触しないように、くれぐれもご注意を。
「割り箸に紐でくくりつけ、液体中に発熱部分が『浮いた』状態にしておく」
「容器の底に、水に沈むニンジン・ジャガイモなどの食材を敷き詰めておく」
などの対策を講じましょう。


「コイルヒーター」「トラベルヒーター」などの名称で販売されている小型の投げ込み式ヒーターは、軽量でかさばらないので、荷物を少しでも減らしたい私は愛用しています。
安全に使いこなすには注意が必要ですが、あれば「容器さえあればお湯が沸かせる」ということになり、重宝します。
たとえば、無菌の水が入手できなくても、沸かして湯冷ましにすることができます。


ただ、繰り返しますが、安全な使いこなしは容易でありません。
「通電・加熱中に安全にプラグを抜く」「適切なタイミングで加熱をストップする」といったこと一つ一つに、いちいち細心の注意が必要です。
この問題は、スイッチつきの延長コードと組み合わせることで、かなり改善されます。


安全面で懸念されるさまざまな問題への対策が取られている上に、マルチボルテージ対応の製品も存在します。
安くはありませんが、新規に購入を考える方にとっては、第一の選択肢かと思います。

・ハサミ・ナイフ・缶切りなどの刃物

「100均」で文具として売られているようなステンレスのハサミは、一個持っておくことを強くお勧めします。
ナイフは「あったほうがよい」、缶切りは「缶詰を開けることが確実ならば必要」といったところでしょう。
まあまあ切れるハサミが一つあれば、たいていはなんとかなります。
ハサミは機内持ち込みできないので、手荷物として預けることになりますが、
「預けた手荷物が検査に引っかかったときに、痛くもない腹を探られて面倒くさいことに」
というリスクが比較的少ない刃物でもあります。
私、車椅子のバッテリーとか保守工具とか、個別検査されてしまう可能性の高いものをたくさん持ち運んでますから、かなりの頻度で荷物の個別検査を受けるわけです。
どうしてもナイフが必要な方は、日本から持っていくことをお勧めします。現地調達は困難なことが少なくありません。犯罪に使うことも可能な調理用ナイフや包丁が、そこらへんのスーパーやコンビニで売られているとは限りません。また、お金さえ出せば誰でも買えるとも限りません。

番外編・鍋と食器

キッチンつきの宿泊施設の場合、通常はキッチンに鍋や食器があります。
そうでなくても、食器となりうる容器は、食材やお惣菜のパッケージとして容易に調達できます。
このため、鍋と食器(箸を除く)はリストアップしていないのですが、メモとして。

定番・シェラカップ。
一つあれば何かと重宝します。
「鍋を兼ねられる食器を一つだけ持っていく」
という場面で最善の選択かどうかは疑問ですが、直火のコンロも使える点はポイント高し。
せめて、600ml程度の容量は欲しいところ。辛うじてですがインスタントラーメンも作れます。

下のリンクのように、台形を逆さにした形状で上が大きく広がっているシェラカップは、投げ込み式ヒーターとの相性が最悪です。
不安定だし、浅すぎるし。
そういう危険な組み合わせでの使用は最初から避けましょう。
空き缶を拾ってきて使う方がマシです。


シェラカップよりは、ホーローやステンレスの大きめのマグカップを一つ持っていく方が便利です。
インスタントラーメンを作れる大きさが理想です。
無理ならせめて、カップ麺のカップのサイズを目安に。
目安としては、せめて 350 ml 以上。


私は、余裕があるときにはステンレスの蓋付きビーカー(1000 ml )を持っていくようにしています。
便利ですよ。注ぎ口も目盛りもあるし。
別売ですがフタもあります。ジャポニカ米を入手できれば、日本風のご飯も炊けます。
キッチンサイエンス実験のために購入しましたが、旅行時にも活躍してもらってます。

別売のフタです。

キャンプの定番「コッヘル」のような、四角い軽量の鍋を一つだけ持っていくのも、手かもしれません。
私は試したことありません。投げ込み式ヒーターを使うには浅すぎるので。


番外編・日本的調味料

私は持って行きません。「ピクルスの素」として持っていく「すしのこ」だけが例外です。
「海外で醤油や梅干しが恋しくなった」
という経験は、これまで一度もないです。

・醤油

都市部ならば、ほぼ全世界のスーパーで入手可能です。
どうしても一定のグレードの醤油がないと生きていけない方には、「かめびし醤油」の粉末醤油が便利そうです。
ふだん、かめびし醤油を愛用しているので、この粉末醤油も使ってみたいです。
これまでと違う発想で醤油を使うことができそうです。


・梅干し

欧米の大都市圏の大手スーパーで普通に売られていたりします。
中国系移民の多い地域では、甘く味付けした干し梅も普通に売られています。
わざわざ日本から持っていく必要を感じません。

20代のときの私は、登山を愛好していました。
この時期は、疲労回復と塩分補給のために梅干しを必要としていました。
ふだん食べている自家製梅干しを割って種を抜き、乾燥させて持って行っていました。
どうしても「ウチの梅干しがないと生きていけない」という方のご参考までに。

・ワサビ・かつお節・納豆・海苔・漬物など

現地で無理なく入手できる薬味・旨味のもと・豆製品などなどを探すほうが楽しいですよ。
魚を日常的に食べる地域には必ず、魚に適したハーブが存在します。
ビーフジャーキーを削って「おかか」風にしてみるのも面白い。
豆料理・豆製品は、世界のほとんどの地域で各国各様の発展を遂げています。
海苔はどこにでもはありませんが、中国系・韓国系移民が多い地域なら、海藻の入手もそれほど困難ではありません。
漬物は……あのね、塩と砂糖持ってるんなら、自分で漬けましょうよ。
というわけで、これらも日本から持って行く必要を感じないのです。

番外編:「飽き」対策


キッチンつきドミトリーに宿泊している場合、実は調味料にはあまり困らないのです。
塩・胡椒くらいは備え付けてあります。砂糖はないこともあります。料理に砂糖使う民族は「あたりまえ」でもないですから。
以前の滞在者の置いていった調味料が「ご自由にお使いください」ということで置いてあったりもします。
問題は、通常のホテルで無理やり自炊している場合です。
毎度毎度
「茹でた野菜と肉に塩つけて食べる」
では、まあ、そのうち飽きますやね。
行きのフライトや昼食・外食で、小袋に入った調味料が出てきたら、ただの胡椒・どこにでもありそうなケチャップやマスタードであっても有り難く持ち帰って有効活用するわけですが、それでも一週間・10日となると飽きますやね。
まだ試したことないんですけど、この塩セットは、「飽き」対策の強い味方になりそうです。


番外編:日本から持っていった方がよいと思われる台所用品ベスト5(まだ試してません)

第一位 手つきのザル・茶こし・味噌こし・穴あきおたまの類

「さっと茹でたい」「火が通ったところで急冷したい」という場面は多いです。
何にでも使いまわせる可能性を考えると、深めの茶こしまたは味噌こし、ということになりそうです。

第二位 菜箸

あれば、料理の効率が全然違うでしょう。

第三位 アク取りシート

肉を煮たり茹でたりしてる鍋の表面に乗せておくだけでアクが取れる有り難いシート。
日本以外の国で見かけたことがありません。

第四位 大根おろし器(スーパーで100円程度で売られているプラスチック製のもの)

チーズや野菜をおろすためのグレイター的な調理器具は欧米文化圏ではポピュラーなのですが、「すりおろす」に適した調理器具は見かけません。
大根おろし器を一つ持って行っておくと、胃腸の調子が悪い時に大根おろし(ラディッシュは概ねどこにでもある)が作れるだけではなく、
「沸かしたお湯にジャガイモやタマネギの擦り下ろしを投入してポタージュに」
といった展開が可能になると思われます。

第五位 すり鉢・すりこぎ(該当製品なし)

大きめのご飯茶碗くらいのサイズ、プラスチック製で軽量、安定する工夫があり、しかも大人の食器として使えるデザイン……という旅行仕様のすり鉢があればいいのに、と思っています。「ニンニクを潰してソースに」など、さまざまに使えそうです。