みわよしこのなんでもブログ : 米国

みわよしこのなんでもブログ

ライター・みわよしこのブログ。猫話、料理の話、車椅子での日常悲喜こもごも、時には真面目な記事も。アフィリエイトの実験場として割り切り、テーマは限定しません。


米国

[ニュースクリップ]2020年8月10日 東京新聞朝刊より

昨日2020年8月9日は、長崎原爆忌でした。出席した安倍首相には、2020年8月6日の広島原爆忌と同じあいさつを使いまわした可能性が取り沙汰されています。しかし、紙面レイアウトで新聞を読むということの最大の意義の一つは、「SNSを流し読みしているだけでも話題になっていて概略がわかるニュース以外のニュースを読むことになる」ということです。
ともあれ、8月9日の翌日の朝刊を読んだら、まず原爆忌のニュースに触れないわけにはいきません(いつものように、note記事の下書きを兼ねています)。

  • 「長崎原爆の日 核 コロナ 私たちの脅威」(一面)
非常に大きな扱いの記事です。高齢化する被爆者たちや長崎市長による核軍縮への願いとともに、安倍首相の姿勢が次のように示されています(下線は筆者による)。
安倍晋三首相はあいさつで『非核三原則を堅持し、立場の異なる国々の橋渡しに努め、核なき世界の実現に向け国際社会の取り組みをリードする』と述べるにとどめ、式典後の記者会見で核禁止条約に参加しない考えを改めて表明した。

私見:
あの、矛盾してるんですけど? 「非核三原則を堅持」「核なき社会の実現に向けて世界をリード」するのなら、「核禁止条約に参加する考えを表明」じゃないとおかしいですよね。スピーチライターさん、大丈夫? スピーチで「非核三原則なにそれおいしいの」「核はなくせないよ」と言わせておかなくちゃ(皮肉)。そうすれば、記者に本音を言ってしまっても、論理的に整合します。広島や長崎なら石ぶつけられるかもしれないけど、熱狂的に支持するファンには好評でしょう。


  • 自衛隊に電子戦部隊(三面)
見出しだけ見ると「サイバーセキュリティの話か」と思ってしまうのですが、そうではなく「電波や赤外線を駆使して攻撃を防ぐ」「侵攻勢力の電波を妨害し無力化」するための専門部隊のようです。相手の通信を妨害して自分の通信を守るサイバーセキュリティ的な要素も含んでいます。
部隊の編成と設置は、2021年春、熊本県の健軍駐屯地に予定されています。しかし既に装備が導入されていたり、専門家育成が開始されていたり、開発費(150億円)や研究費(38億円)が予算化されていたりします。

私見:
福岡県出身者としては「なるほどね(ニヤリ)」だったりします。廃藩置県以来、福岡県と熊本県の意地の張り合いは大変なもので、省庁の九州支局は引っ張り合いになりました。総務省の九州総合通信局が熊本市にあるのは、その名残です。というわけで、九州なら「熊本に」ということになるのでしょう。福岡市はいろいろ集中しているから、危機管理のための分散という意味でも熊本のほうが良いかもしれません。
いっそ、もう、戦争は全部eスポーツか国家首脳どうしのジャンケンに置き換えてほしいものです。五輪は少なくともeスポーツだけは必ず開催ということにして、文字通りの世界平和の祭典にしてほしいです。

  • 自宅で診察から薬処方まで 政府、オンライン化に本腰(三面)
7月に取りまとめられた「骨太の方針」に明記されている、行政・教育・医療分野のデジタル化やオンライン化の推進方針です。医療については、診察から薬剤の受け取りまでオンラインで完結する仕組みを構築し、同時にマイナンバーカードを核として個人情報の一元化を進め、同カードを2021年3月から健康保険証として使えるようにするそうです。現在は新型コロナの院内感染を防止するため、2020年4月から電話や動画通信によるオンライン診察が初診から認められています(以前は初診はNGでした)。この特例は当面継続される見通し。しかし、日本医師会は慎重姿勢を示しています。重い腹痛・目の外傷・アレルギー性疾患など、オンラインでは見極めできない症状もありますから。

私見:
オンライン診察、ほんっと助かってます。私の持病のかかりつけ医療機関の1つは関西にあり、大学院リアル通学のついでに受診していたのですが、オンライン診察で済めば交通費が浮くし、関西に行く必要がないので必要に応じて受診できるし。
しかし、今回の政府方針には「んんん?」です。「マイナンバーカード」というキーワードを見たら、警戒しちゃいますよ。各省庁等のデータを一元的に扱うために必要不可欠なのは、わかります。違う基準で個人が識別されている表をツギハギする危険性は、データベースをちょっと扱ったことがある人なら「うんうんうん!」でしょう。でもさ、もう役所内部ではマイナンバー使ってるじゃん? なかなか皆さんが「マイナンバーカード」を持ちたがらないのは、銀行のキャッシュカードやクレジットカードを1枚紛失しただけでも大変面倒くさいことになるのに、「1枚なくしたら個人情報のすべてが、どうなるんだ。あああ」というカードを持ちたくないからだと思うんですよ。それに、効率化するんだったら、多くの国民に警戒されている「全員にマイナンバーカードをもたせる」ということからではなく、情報漏洩リスクを増やすことではなく、FAXとかFAXとかFAXとか、個々の役所の内部とかからじゃないかと思うんだけど?
一個人としてオンライン診察の利便性を享受し、新型コロナウイルス感染のリスクを回避するために、何かを犠牲にさせられる必要はないと思うのです。マイナンバーカードを持つことについては、私は超超超超、慎重になりたい。行政が預かっている自分の個人情報が漏洩した時、自分のマイナンバーカードが最初に疑われるんじゃ、たまらないし。


  • 「2020年米大統領選 攻防・投票率(下)」と「バイデン氏 また失言」(外報面)
「2020年米大統領選 攻防・投票率(下)」は、短期連載の最終回です。現政権に有利になる選挙のルールいじりは、もちろん、米国でも行われています。新型コロナ対策のため投票所が減らされ、さらに新型コロナ対策のため同時に投票所に入れる人数が減らされていると、屋外で4時間待ってやっと投票できることもあります。前回まで、そのような現実の存在が示されてきたところ。さて、これからはじまる大統領選はどうなるか。
1996年以来、米国では郵便投票が拡大してきています。2016年の大統領選では21%~24%(調査主体による)。新型コロナ対策としても有効でしょう。しかし、手続きが面倒くさいと、それだけで利用されにくくなります。
米国の全50州のうち、全有権者に投票用紙や申請書が郵送されてくるのは17州。他25州でも、郵便投票は幅広く利用できます。しかし8州は、兵役や病気など厳格な条件があります。
リアル投票には、そもそも投票妨害がつきもの。「投票妨害に苦しむ黒人有権者らマイノリティー(人種的少数派)は、(筆者注:投票所が減らされて)投票機会が一層狭まることが懸念されていた」とあります。トランプ大統領は「不正が横行する」「外国に介入される」などと主張して、郵便投票に反対しています。しかし共和党幹部ですら、郵便投票に対するトランプ大統領の姿勢を疑問視しています。とはいえ、郵便投票の集計や確認作業は通常の投票より時間がかかるし、混乱も起きそう。紛争になったら決着まで長い時間がかかる可能性もあります。
「バイデン氏 また失言」は、バイデン氏が記者のインタビューに応じて「ヒスパニック社会は(黒人社会に比べて)多種多様」と発言した件です。5月のラジオ番組でも「(投票するにあたり)私かトランプ氏か迷うようなら黒人じゃない」といった発言をしています。人種差別的な発言を繰り返していると、大統領選はどうなることか……?

私見:
選挙妨害、ハッとしました。見た目でわかるマイノリティがヘイト・クライムや弾圧に遭いやすいことは、米国だけではないし、よく知られている事実です。しかしながら、選挙行動でも妨害に遭いやすいとは。意外ですが当然でしょう。投票日、投票待ちの行列が出来ているところに爆破予告でもあったら、それだけで相当数の投票者が、少なくとも「その日は投票できない」ということになりかねないわけですよね。「この投票所で黒人(例)が投票できないようにすれば結果が変わるぞ」とかいう時に、腹黒く恐ろしい企みがなされたら……考えたくありません。郵便投票やオンライン投票は、公正さを担保するのがリアル投票よりも難しいのではないかと思いますが、実のところはどうなのでしょうか。
バイデン氏の人種差別的発言については、米国メディアが修正したりトーンダウンしたりせずに報道しているところに、日本より成熟した民主主義の存在を感じます。米国は、ラジオの生放送でも電波に乗せる前に数秒の遅延を設けています。なにしろ、ピューリタンが作った国ですから。子どもに聞かせられない用語は「ピー」しなきゃ。ゾーニングを徹底した上での「表現の自由」です。でも、バイデン氏の問題発言は、そのまま電波に乗り、または記事に出ているわけです。しかも、必ずしも「そのメディアや読者層が、トランプ氏2選を期待しているから」というわけでもないし。米国の理解は、まことに一筋縄ではいきません。
さて、人種差別するトランプ氏か。トランプ氏に比べればマイルドだけど人種差別しそうなバイデン氏か。そこにコロナ禍への対応や経済が絡む中で、米国選挙民が迫られる究極の選択。これから約3ヶ月、日本から関心を向けながら横目で見守ることになるでしょう。

メモ:米国の貧困政策について日本で誤解されていること

私もそんなに詳しいわけではないんですが、「アメリカでは」と日本で喧伝されているもろもろは、必ずしも米国の実態を正確に伝えていません。何点かをここに記しておきます。

・「フードスタンプ(SNAP)は食料品にしか使用できず換金できないんだって?」

日本でもフードスタンプを導入すれば「生活保護費でパチンコ」はなくなる、という主張が多いんですけど、結構弾力的な運用がなされています。
自動車を利用している困窮者が食料品店でフードスタンプを利用して買い物をしたとき、いくらかお店で現金化して、パーキング・メーターで駐車代を支払うことが可能である、など(「困窮者、自動車を手放すべし」的なルールはありません)。
もちろん悪用する人はいるんでしょうけど、「だからフードスタンプは厳格に現金化できないように!」という議論には、米国ではなかなか発展しないようです。

・ 「米国の貧困層は日本の貧困層よりも惨めなんでしょ?」

「だから日本の生活保護当事者をもっと困らせろ」という主張につながることが多いのですけれども、どうなんでしょうか? 
確かに米国には、ニューヨーク市だけで5万人とも7万人とも伝えられる多数のホームレスの問題に代表される貧困問題があります。
しかし総合的に見て、公的貧困対策は日本よりもずっと充実しています。
情報を得て、支援につながることのできた人に対しては、日本の生活保護と同等かそれ以上の手厚い支援が用意されています。「支援につなぐ」も自治体がNPOに委託するなどしています。「支援につながず追っ払うためにNPOに委託」というのではなく。
ただ、それらの支援が、格差の拡大、貧困の拡大に追いついていないのは事実です。 目の前の問題にすぐ対処できるだけの予算執行がいつも可能とは限らないので、支援につながれない多数の方々が結果として取り残されてしまうという問題はあります。

・「米国の生活保護費は低く、受給者は就労を求められ、そうしないとその低い保護費ももらえないんでしょ?」
 
これはTANFを指しているものかと思われますが、そもそも日本の「生活保護」 そのものに該当する制度が米国にはありません。TANFの金額そのものは生存にも足りないのではないかと懸念されるようなものですが(しかも今後削減される見通し)、他に住の支援があったり、子どもへの教育支援があったりします。それらを総合すると、日本ほどひどくはないのでは、という感じです。ただ、支援が数の面で追いついていないという現状はあります。

・「米国は自己責任の国だから弱者に手を差し伸べないんでしょ? 日本でもそのグローバル・スタンダードに従わなければ」 

自己責任を重視はしますけれども、そうする以上、自己責任を果たす前提条件であるフェアスタートを重視するのが米国です。たとえば、低所得層・マイノリティの子どもたち向けの無料の教育支援が、あちこちで提供されています。教育を行わなければ、貧困が連鎖するだけですから。その内容も、「高校にも行けなさそうな子どもを高校に進学させて卒業させ、手に職をつけさせて介護業界にでも」というようなものではありません。「そういう子どもたちだからこそ、よりよい将来を」とハイレベルの進学を目指させるプログラムもいくつかあります。
それに、米国では食料品の消費税率は、他の商品より低く抑えられています。無税のことも。「食」という生存の基本で、低所得層が不利にならないようにということです。
米国には、フェアネスが重視される風土があると思いますよ。少なくとも日本よりは。

・「ではなんで、米国にはあんなにホームレスがいるの?」

私には分かりません。といいますか、一言で言えるような問題でもないかと。
ただ、米国を実際にドライブしているといえる層(政府ではなく)、政府、自治体、市民社会、個人、それぞれのレイヤーに異なる考え方があること、各レイヤー間の力関係に状況が依存しうることは、理解しておく必要があるかと思います。
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(中嶋震氏との共著 2013.3 丸善ライブラリー)


「組込みエンジニアのためのハードウェア入門」
(共著 2009.10 技術評論社)

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