みわよしこのなんでもブログ : 社会モデル

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ライター・みわよしこのブログ。猫話、料理の話、車椅子での日常悲喜こもごも、時には真面目な記事も。アフィリエイトの実験場として割り切り、テーマは限定しません。


社会モデル

精神障害者保健福祉手帳の「級」はどう決まるのか

精神障害一級という女性が、ネットで話題になっているようです。


ニコ生で第2の佐村河内?精神障害1級の女に疑問の声が続出!
(略)
「らみあ」もしくは「はぐめ」といったHNで配信してきた女性は、深刻な精神障害を抱えているという。当人が配信中に見せた障害者手帳には、1級と書かれていた。1級といえば、独力では日常生活を営むことが困難とされる、重度の障害である。
(略)
それにもかかわらず、彼女の配信内容を見る限り、あまりにも元気であり、1級に相当する深刻な状態とは思いがたいと、疑問視する声が相次いでいる。
(略)
介助が必要なほどの障害とは信じがたいと言われてきた。
(略)
手帳を交付されると、税金の控除や、交通機関、電話料金、様々な施設の利用料金の割引など、各種の優遇の対象となる。ただし、障害の等級に応じて、受けることのできる福祉サービスの内容は異なる。これまでも手帳の更新がなされているが、症状が改善しているとしたら、引き続き手厚い福祉サービスを受けていることは不正であるとの批判が続出。 
(略)
当人は、群馬県に在住であるという。以前に掲載した画像には、通院先と思われる県内の病院の名称も確認されている。当サイトでは、群馬県の健康福祉部障害政策課精神保健室に話を聞いた。担当者によると、この件については全く把握していなかったという。詳細を聞かせてほしいとのことだったので、経緯を説明し、関連情報を提供した。本件に関して、これから調査がなされる模様だ。
(略)
彼女は精神障害の疑惑以外にも、ニコ生の男性配信者たちとの肉体関係なども度々暴露し、話題になってきた。 
 
では、精神障害等級はどういう基準で決まっているんでしょうか?
こちらが比較的わかりやすい説明だと思います。

情報屋クレヨンボックスの 目からウロコの制度情報
 
精神障害1級に関する説明は下記の通り。

  • 入院患者においては、院内での生活に常時援助を必要とする。
  • 在宅患者においては、医療機関等への外出を自発的にできず、付き添いが必要である。家庭生活においても、適切な食事を用意したり、後片付けなどの家事や身辺の清潔保持も自発的には行えず、常時援助を必要とする。
親しい人との交流も乏しく引きこもりがちである。自発性が著しく乏しい。自発的な発言が少なく発言内容が不適切であったり不明瞭であったりする。日常生活において行動のテンポが他の人のペースと大きく隔たってしまう。些細な出来事で、病状の再燃や悪化を来たしやすい。金銭管理は困難である。日常生活の中でその場に適さない行動をとってしまいがちである。
 
この女性が精神障害1級に該当している可能姓は否定出来ないと思います。「ニコ生で配信できる」「(ときどき)イベントに(一人で)行ける」 といったことがらは、何一つ、上記の記述と矛盾しません。

もう一つ考慮する必要があるのは、居住している地域で提供されている福祉サービスの内容です。
群馬県で精神障害者向けに提供されている福祉サービスの内容は、県サイト内のページを見てもよくわからないのですが。
精神障害者保健福祉手帳に基づく各種サービスについて
特に、生活にかかわる支援がどうなっているのかは、全くわかりません。

この女性は、日常生活を自力で営むことが非常に難しく、またネット以外の対人接触を避けたがる傾向があったりして、地域生活を営みつづける上で介護給付(ヘルパー派遣)が必須なのかもしれません。 
また、医療機関や役所でのコミュニケーションに問題を抱えており、そういう場面では移動支援(付き添い)を必要とするのかもしれません。
自治体によっては、介護給付や移動支援などのサービスの申請の条件に「精神障害◯級以上」 が含められている場合が多々あります。もしかすると、群馬県では1級が条件なのかもしれません。上記のページではわかりませんが。

医師の判断というより、医師も含めたソーシャルワークの結果として、
「この人が大きな問題なく地域生活を続けるにはアレとコレとソレがどの程度必要で、そのアレ・コレ・ソレをこの地域で得るためには、精神障害1級の手帳が要件」
という判断で1級の手帳が交付された、という可能性もあります。
これはインチキというよりは、
「日本の不備だらけの障害者福祉制度の中で個々の障害者の生存・生活を守るためには、他にどうしようもない」
という問題です。
日本では、障害の社会モデルに根ざした制度が全く未発達です。
地域生活を考える上で、障害の社会モデルを考慮することは必要不可欠です。
まったくの個人モデルでしかない日本の障害者福祉制度の中で、地域生活のために、社会モデル的視点から必要なリソースを得ようとすると、一見、手帳の級と本人の「世間的な見た目」に矛盾が発生する場合はままあります。

最後に。
元記事末尾の
彼女は精神障害の疑惑以外にも、ニコ生の男性配信者たちとの肉体関係なども度々暴露し、話題になってきた。
について。
なぜ、そんなことを書くのでしょうか。理解に苦しみます。
「疑惑」って、その記事の書き手と一部ネット民が勝手に言ってるだけじゃないですか。
そこにさらに、複数の男性と肉体関係があった話を追加? どういうつもりなんでしょうか?
それは事実であれば、むしろ、精神障害が重い可能性と関連付けられる話なんです。
「精神障害1級は重すぎるかも」という記事に、なぜ「精神障害が本当に重いのかも」という話を追加するんでしょうか?

群馬県が本当に調査を開始するのか、どういう調査をするのかは分かりませんが、
「ニコ生やってイベント行ってたから精神障害1級ではない」
というネット世論のとおりに群馬県が動くようだったら、群馬県の精神障害者は群馬県を捨てるべきかもしれません。もしそうなったら、私は心から群馬県の精神医療関係者を軽蔑します。
そんなことをしているうちに、日本に障害者の住める場所はなくなるのかもしれませんが。
 
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精神の健康状態が危ういときに心がけていること

エントリ
激ウツからの脱出の記録」 
が好評なようです。読んで下さった皆様に感謝です。

でも、精神の健康状態が極めて危機的な「激ウツ」などの状態には、 
最初から陥らない方がいいんです。
予防するためにどうすればよいか、何ができるかをまとめてみました。

●「生きものの基本」を、ふだんから充実させておく

いわゆる「メシ・フロ・ネル」です。
優先順位は、睡眠>食事>入浴 といったところですが、
これらは相互に関連しています。
睡眠を取るためにも身体を「気持ちよい」状態に。
そのためには入浴を。
なるべく健康的な食生活を。

●向精神薬で解決できると考えない

向精神薬は、適量を適切なタイミングで使用すれば、
非常に心強い武器となりますが、
あくまで「自分自身」にしか効きません。
自分の外に、精神状態を悪化させる原因があるとき、
自分の環境が劣悪すぎるときには、
その原因や環境に働きかけるしかないのです。

●向精神薬は適量を適切なタイミングで使用する

「言うは易く行うは難し」の最右翼です。
これを可能にするためには、
薬の服薬量・タイミングなどについて、
自分が主体的に決定できる立場になくてはなりません。
これは病院選び・医師選びとも関連します。


●「ドクターショッピング」はいくらでも

「近いから」「通いやすいから」「医師が著名人だから」
というような理由で、精神科の通院先を選択しないようにしましょう。
特に病気のときに通院先を変更するのは非常に大変なのですが、
信頼できると思える通院先や医師に出会えるまで、
ドクターショッピングは存分にすべきです。
(私は、やらなさすぎました。
 これまで通院した精神科は3箇所です)

●できれば、ソーシャルワークに力を入れている病院に

精神疾患の治療は、その人が社会でどう生きるかと不可分です。
ソーシャルワークに注力している病院の中から、
信頼できる通院先を見つけられたらベストです。
体制の充実度の目安は、
「入院施設を持たないクリニックで、常勤のソーシャルワーカーが少なくとも2人いる」
です。
体制が充実していても、
「信頼できないなあ」「嫌な感じだなあ」と思ったら、
そこは、あなたには適していないと考えてよいのです。



●自分「だけ」では治れない

起こっているのは自分自身の精神症状であるとしても、
背景にはさまざまな要因があり、それらは多様に絡み合っていることも多いのが、
精神疾患との付き合いの難しさです。
ゆめゆめ、
「自分が薬を飲んで、医者のいうことを聞いていれば済む話」
と考えないようにと心がけています。
一人で悩んでも、思考は「堂々巡り」から出て行かないものです。
私は深刻な状況にあればあるほど、
数多くの人々、
特に、自分の煮詰まった状況の外にある人々に、
積極的に助けを求めるようにしています。

●あくまでも自分が主体

自分は、
自分の精神衛生の維持・向上という大プロジェクトの
プロジェクトリーダーです。 
自分が主体であることを認めない人に対しては、
アサーション・上手な断り方・場合によっては関係を断ち切るなど、
相手が必ずしも望まない対応をしてもよいのです。

●プロジェクトを分割して推進する

ときどき、
「自分の精神衛生の維持・向上」
というプロジェクトの内容を、細分してみます。
できれば、SWOT分析もしてみます。

-日常生活の維持・充実(自分・家族・ご近所さんなど)
-職業生活の維持・充実(職場の関係者・労組(独立系労組を含む)など)
-援助の専門家(カウンセラーなど)
-精神疾患の専門家(精神科医・精神医療関係者など)
-身体疾患の専門家 (医師・医療関係者など)
-経済問題の専門家(税理士・FPなど)
-紛争解決の専門家(法律家など)

……まだまだありそうです。



●イヤなこと、苦痛なことは減らす

好きなこと・楽しいことを増やすのは、
精神状態が良好でないときには避けたほうがいいです。
そもそも、そんなことが出来る状態でもないでしょう。
でも、「イヤなことを減らす」「苦痛を減らす」は、
むしろやりどきです。 
「苦痛を減らす」
には、
「長期放置しておいた気になる虫歯を治す」
「苦痛になっているSNSの『知り合い』を整理する」
といったことも含まれます。 

●「メンヘラーのワガママ」という批判に対しては?

以上、「メンヘラーのワガママ」という批判も、当然ありうるとは思います。
でも世界的に、精神障害や精神疾患は、
個人モデルから社会モデルへと移行しつつあります。
予防と治療は同じことです。
予防が難しい社会で治療しても意味がないんです。

私は、私の周辺の部分社会を、
精神疾患の悪化の予防ができて、
悪化した場合には治療的な環境となるように
心がけています。
その部分社会には、自分も含まれています。

こういう考え方で対処していくようになってから、
私は精神疾患と、過去よりもずっとラクに
問題少なく折り合えるようになりました。 
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 音声合成技術の現在と未来」
(共著 2015.4 丸善出版)


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 (執筆協力・永島孝 2013.9 技術評論社)


「生活保護リアル」
(2013.7 日本評論社)

「生活保護リアル(Kindle版)」
あります。

「ソフト・エッジ」
(中嶋震氏との共著 2013.3 丸善ライブラリー)


「組込みエンジニアのためのハードウェア入門」
(共著 2009.10 技術評論社)

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