精神科入院は、慎重に選んで自分の意志で行うのであれば、そんなに悪いものではありません。
「慎重に選べば」「自分の意志で」は非常に重要な前提なのですが。
誤解されている「精神科入院」のもろもろについて、メモ書きしておきます。

・入院先は、どう「慎重に選べば」よいのか 

可能であれば、実際に入院した人の話を聞くのが一番です。それも数年前ではなく、せめてこの1年以内くらい。
少なくとも、虐待の噂を聞いたり、虐待が実際に報道されていたりするようなところは避けたほうが良いかと思われます。
しかし、
「閉鎖病棟・長期入院患者は悲惨だけど、開放病棟の短期入院患者には居心地がよい」
ということもあります。
私は2008年、ある都立精神科病院に2週間ほど休養入院をしました。開放病棟の一部に設けられた休養入院用の個室です(利用料は食費のみ)。建物が古くてボロいこと・身体障害を合併している患者に慣れていないようだったことを除いて、問題は何もありませんでした。他の患者からのプライバシーも保たれていましたし(室内に監視カメラはありましたけど)。ゆっくり休養して、ある程度元気になって退院することができました。
しかし同じ精神科病院の閉鎖病棟の方では、何回も虐待が報道されています。そこに入院した友人たちからも、虐待を受けたという話を何回か聞いています。
こういうこともありますので、病院名だけでは判断できません。

・「自分の意志で」行う入院の形態は?

自分の意志で入院するのであれば、任意入院以外はありえません。自分の意志で任意入院し、入院の必要がなくなったら自分の意志で退院することが一番です。
医療保護入院・措置入院であっても、可能な限り本人の同意に基づくことは求められていますが、これらの形態では退院が面倒なことになります。「病状が安定していて退院しても大丈夫そうだと医師が判断しており、本人も退院したい」というだけでは退院できない場合もある、ということです。

・携帯電話やパソコンは使える?

通信の自由を妨げないという観点からは、使用を禁止できません。ただ、医療機器への影響という観点・他の患者への影響という観点から「使用可能なエリアが限定される」ということはあります。また「その部屋の入院患者全員がパソコンを使ったらブレーカーが落ちる」という電力事情から「パソコンはご遠慮ください(携帯電話は可)」という精神科病院もあります。

・開放病棟か閉鎖病棟か

任意入院の場合は、ほぼ開放病棟となります。閉鎖病棟が選択されることもありますが、その場合も申請すれば外出は可能です。ただし、自傷他害の可能性が高い場合には「理由ともども書面で通知した上で閉鎖病棟へ、行動の自由はいくらか制約」がありえます。

・「保護室」って?

「暴れる患者を強引に閉じ込める場所」というイメージが強い「保護室」。未だにそういう運用がされている精神科病院があるという話を耳にします。一方で
「必要を感じた患者が自ら申し出て入り、必要なくなったら出てくる」
という運用がなされている精神科病院の話も、ここ数年は耳にします。患者が「必要を感じる」には、「外界からの刺激を減らして休養したい」といったことも含まれます。

・家族に無理やり入院させられたりしない?

現在は、3親等内の親族の誰かの同意で医療保護入院が可能です。だから、「その可能性は皆無ではない」ということになります。日常、家族に入院させられる可能性を考えてビクビクオドオド暮らさなくてはならないようだったら、家族と別居することを考えるのが現実的でしょう(まともな精神科病院なら、家族の一方的な申し出だけで医療保護入院させることは避けますが)。単身生活するだけの収入源を持っていない場合には、2014年3月現在ならば、生活保護制度を利用することができます。

・入院以外の選択肢は?

精神障害者保健福祉手帳を取得している場合には、障害者施設への短期宿泊・一時入所という選択肢もあります。「落ち着いた環境でストレス少なく休養する」が可能な施設もあれば、病気がひどくなりそうな施設もあるようです。

結局は、事前の情報収集が要ということになります。
日頃から、ご自分自身が信頼でき、情報が集積されている障害者団体・NPO・作業所・医療機関等と連携しておくことが、何よりも重要です。
たいていは、精神疾患と長く付き合っているうちに、そういうつながりが自然に出来ていきます。
よほど差し迫った事情がない限りは、無理やり連携する必要もないかと。