立命館大学大学院キャリアパス推進室シンポジウム「博士人材が創造する未来」を聴講しました。
2012年度から文科省が公募を始め、現在継続中の「リーディング大学院」に関するシンポジウムです。

第3部パネルディスカッションをTwitterで実況中継していたので、まとめておきます。

パネリスト:榎木英介氏(医師・近畿大)、和田元氏(同志社大)、藤田喜久雄氏(阪大)、米山裕氏(立命館大)
ファシリテーター:西田亮介氏(立命館大)

 (西田)立命館のキャリアパス推進室でも活動しているのでファシリテーター。パネリストの方々から数多くの報告あった。猪俣氏からエビデンスに基づいた現状、榎木氏から今後の展望、各大学からグッドプラクティス。重たい現状を希望に切り替えていきたい。パネリストの皆さん、軽く一言を。榎木さん、感想を。
(榎木)各校の取り組み。自分の抱えている問題と共通するものが多い。心強い。博士が学術領域にとどまらずに活躍することを重視。院生の体験からも良い教育と感じられた。こういう取り組みが続けば、博士への社会の先入観除去できる。こういうことをやっているという情報発信必要。
(西田)各校からは? 

(米山)同志社、阪大の取り組みを見て、改めて、立命館の取り組みのフォーカス弱かったと実感。両先生にお尋ねしたい。本学の院生にアンケート。衝撃。回収率、昨年10%、今年5%。Webで。「研究について語り合える仲間がいる」と答えてくれたのが半数程度。仲間がいない。研究会や学会に参加しないという院生も4割くらい。院生が孤立して生活している。社会に出て行って影響力を与えられるように切磋琢磨してほしいのに。危惧。両大学、院生の行動変容は? 他の院生との差は?

(和田)答えるのが難しい。リーディングプログラム、みんな興味持つのはいい。学生ではなく親の問題かもしれないが、修士相当で「就職しろ」という親。頭痛い。希望者が増えていかない。こういうプログラムが走っていると、われわれは声を出せる。企業に就職したら数年で海外に出される。それで学生のモチベーションを高められていることがある。二つ目。サブメジャーが院生の負担。忙しい。他の院生から見ると、忙しい人が近くにいる。それは良い刺激。

(藤田)学生の選抜。阪大のプログラム、いずれかの研究科の入学者から選抜。合宿型。ワークをさせて、リーダーシップが取れるかどうか。ストレス下で行動がどうなるか。もともと持っているものが他の学生と違う学生を伸ばせているかと思う。ただ時限プロジェクト(?)今後が問題。一気にはできない。

(榎木)孤立してる院生がいるという話。自分も10年以上前、学部学科を問わない若手研究者ネットワークをつくろうとした。今も続いている。そういうところに来る院生、意識高い。でも他の一般の研究室にこもっている院生との違いが大きくなる一方。なんとかしなくてはと本を書いた。でも本は読んでもらえなかったり。意識の格差どうするか。現在進行中の問題。

(西田)アウトリーチの問題もあるかも。推進室のプログラム、受講者が集まりにくい。アンケート取っても、研究室にいない層がかなりいる。NPO、社会の中で、この問題をどうアウトリーチして参加呼びかけるか。意識高くない層を巻き込むことについてアイディアは? 

(藤田)工学部機械工学。(聞き取れず) 

(和田)博士だけではなく修士にも関係。大学院で専門性をつけて企業に。でも専門性あるだけでは企業でがんばれない。社会全体の問題。何年か経つと職場で仕事ができなくなっている。企業側にとっても問題になるほどの社会現象。大学のミッション、社会に出る前の教育重要。でも「人間が生きるには何が必要か」といった根本が必要。開発途上国に学ぶこと重要。フィリピン、生きること重要。ポスドク、次のポスト、必死でアピール。日本、みんなで知恵を出さないと。

(榎木)藤田さんの分野依存という話。確かにある。「バイオだけは無理」ということがある。そこに大きな問題あるかなと。広い層を巻き込むことの重要性。今は来たい人が来ている。意識高い層しか来ない。文科省から「降ってくる」とかいう形で上から仕組みを変える必要があるかと。NPO経験から。

(西田)いまの3名の先生方は理系。人文社会系の立場から、米山さんは? 

(米山)ドクターは就職しんどい。企業インターンシップ等の取り組みはあるが希望者がいない。研究室の先生が3ヶ月のインターンシップに難色を示す。大学の先生方、大学院改革に関する意識まだ低い。学生だけではなく教員も。人文系、修士でも就職きびしい。ましてや博士は。企業からのニーズがない。どう働きかけていくかが問題。北欧、人文社会系の博士、マネジメントで活躍できる。日本の社会も、そういう人材を活用できないとグローバル競争に勝てないという認識あるが、採用に至らない。大学も努力の必要があるが、企業にも変化を求めなくては。人文系、理系よりずっときびしい。

(藤田)入り口出口の問題。優秀でも出口がない。この10年、諸外国でも院生が増えている。なぜ増えたか。高度人材が求められているから。日本の人材のレベルをあげないと。求められるレベル変わっている日本でいう高度人材ではなく、もう少し幅のある人が求められている。その違いを埋められると、優秀な人が博士に行きたがるようになると思う。イギリス、エジンバラ大学の取り組み。学部より博士の方が就職がいい。育成がうまくいくと好循環が起こる。大学だけでなく社会全体の問題として産業界の人の使い方も含めて変えていく必要。

(米山)リーディングプログラムで活躍できる素質を持った元気な学生、簡単に就職。そういう人材を吸引できないところで、この種のプログラムは日本では苦戦。日本の高等教育、18歳にかたよる。大学院も22歳にかたよる。社会経験ある人の還流弱い。そこを変えていくような大学改革をどうデザインできるかが課題。

(和田)大学改革=意識改革。学生がなぜ院に行きたがるか。一部、就職のばしたい。それでかまわない。心の準備、専門能力の準備。教えてほしい。教員が「専門だけ教えてればいい」と思うから学生は不満を持つ。2年、5年で育たないそこを変革しないと。「質の保障」という言葉は嫌い。でも学生の顔を見て教育しないと。そうすればアンケートにもよい答えがあるのでは。院生、その人しかやれないオリジナルな研究をしているはず。それを自由闊達に話し合う機会は必要。研究の話が教員としかできないのは普通。先生たちに「研究者育成」とかんがえるのをやめてほしい。その院生をどうすれば、本人にとって一番幸せなキャリアパスを作れるか。そういう観点から育成してほしい。

(西田)今後の展望、大学だけで解決できない問題について、一言。(榎木)教員の意識大切。結局そこ。大学院、ポスドク問題。でも旧帝大全然動かない。そこを変えていくこと、これからの主戦場。継続して議論させてほしい。

(和田)学生さんへ。自信もってよい研究をしてほしい。仕事ができるということを証明したようなもの。だから大学院生活を充実させて。

(藤田)研究は孤独という話。自分たちのプロジェクト、チーム。でも企業の経営者、チーム、議論はするけど、最後は一人で決断。個人として強くなってほしい。研究のある種の孤独感をつきつめていくこと、重要ではないかと思う。責任ある仕事は孤独。そこは気にしなくてよいのでは。意識改革、そのとおりだけど、意識の伝搬、心、意識の問題。少数から。意識を変えざるを得ない道筋が見えて、規模も確保できるところまで、辛抱できるか。今回は7年間。学生が出てくるのは?年先。個別のプログラムを超えた少し広いところで考える必要。

(米山)リーディング大学院、ぜひ成果を。本学、学部の規模に比べて大学院小さい。D、M合わせて3000人。研究科20。かなり細分化されたユニットで研究、教育。大学院の制度改革を含めた大きな課題。意識のところ大事。政策課題として取り組まねばと思う。大学院、今日の議題にあがったプログラム、学生参加を超えた施設の課題など、いろんな課題がありうる。リーディング大学院、学生の集う空間。本学でも、学生の集える環境づくり、施設拡充、努力しているところ。一つ誤解ときたい。学生の孤立感が問題。研究は一人の作業。でも指向性として、自分の発見を他の人に伝えたいという意識あるべき。人とつながりつつ自分が進んでいく感覚、どう院生に広めたらいいか。そこも課題。

(西田)質疑応答に。

(院生)先生方へ。参加している学生、もともと意識高い。意識を高めていけていない学生に対しては? しかたない? すくい上げる取り組み? 

(西田)なかなか積極的に参加できない学生を巻き込む取り組みは? 

(和田)何度もPR。それより研究室に一人はプログラムの院生。「くたくたになるけど、やりがいある」。それが重要。みんなに来て欲しいとは思っていない。大変。でもプログラムの院生を通じて他の院生に伝わるものがある。

(榎木)「参加してよかった」という具体的な何か、「楽しかった」「得した」が必要。大学の方々の強い発信+学生も媒体、好循環を。

(福大PD)ホームページ見て参加。福大でも始めようとしている試み。自分も参加。先生方へ。専門性+汎用性のある能力。大学の役割も変わっている。地域への貢献。教員でも職員でもないURA、調査員、教員の事務の中間のような役割、各大学ではどう位置づけられているか?

(西田)新しい職業の位置づけは? 

(藤田)阪大、そういう人多い。第三カテゴリーの職種。博士課程の人材の出口、博士号があるから出来る仕事が増えつつある。サイエンスコミュニケータなども。高い専門性、能力が求められる。本人も先入観をすてて、自分の持っている何かをよりよく活かすこと重要。

(米山)立命館、大学院教育を受けた人、専任教員以外の進路が増えている。任期なしで採用すると人事ローテーションの中での処遇が難しい。任期つき、プロジェクト単位にならざるを得ない。各大学で多く見られる現象と思う。学習支援、研究支援、ニーズはたくさんある。大学がキャリアパスとして位置づけるところまではいっていない。大学の人事というところでは難しい面があるのが現状。

(榎木)今の話重要。友人にサイエンスコミュニケータ、URA勤務多い。みんな単年度契約だったり、不安定。理研も単年度契約。キャリアパスとしていくなら改善の必要。大学で取り組み必要だと思う。

(西田)では本日ここまで。ありがとうございました。(拍手)