大学の理科系学部に進むと、必ず「学生実験」というものがあります。
目的は実験そのもの+実験内容の理解だけではなく、実験にまつわる数多くのスキルを身に付けることです。
私は大学時代に勤労学生で、職場は研究所でしたから、「大学で身につけた」という意識はなく、かえって「あ、大学ではこういうこと教えるのね」と新鮮に感じるくらいでしたけど。

以下、どういうことを教えられるかについて書いておきます。どこまで徹底するかは大学によるかと思いますが。

-実験ノートを用意する
必ず綴込み式ノートのこと。ルーズリーフ禁止。
ページの抜き取りや改ざん、悪意がなくても紛失を防止するためです。

-その回の学生実験でやることの予定と、実際にやったことを書く
やることの予定を書くことまでは指導してない大学の方が多いかも。これ書かせておくと「レポートが書けない」という悩みが減るんです。レポートの構成や内容を意識して実験することになりますから。

-事実を書く
やってないことを「やった」と書いてはいけません。

-あとから再現できるように書く
「何をどうしてどうなった」を、成功するにせよ失敗するにせよ、後から可能な限り再現できるように書きます。
学生実験で、実験が失敗したからといってやり直させることはほとんどありませんが、失敗したときにこそ記録がモノを言います。

-具体的に書く
起こった現象・観察された結果などを具体的に書きます。定性実験(現象そのものを問題にし、数量をあまり問題にしない実験)であれば、「色はどうなった」「形はこうなった」「こういう刺激を加えたときの反応の傾向はああなった」などを具体的に書きます。

-思い・感想・妄想を書いてもいいけれど、事実と紛れないように 
もしかすると、それは後に「ひらめき」と呼ばれるかもしれません。思いついたら書いといていいんです。でも、実験で行ったことやその結果と、後に自分で混同しないように。 

この訓練は、「他人の知的財産権を守って、新しい知的生産を行う人を育成する」という観点から重要視されています。

参考:
実験ノートの書き方(野島高彦氏)
現役の大学教員による、大学1年生向けの「実験ノートの書き方」 。たいへんわかりやすいです。

研究を職業にするようになると、このような研究専用のノートを使用する場合があります。
ページの抜き取りや改ざんが困難なように作られています。
全ページに通し番号が打ってあり、上司等がチェックを行うための欄も設けてあります。
知的生産を「確かに自分が行いました」と、参考にした他者の知的生産ともども明らかにできるようにしておく目的のノートです。

通し番号が便利だし、紙質もよいので、私はふだんの取材に愛用しています。

こちらは、研究室に配属された段階の大学4年生以上(?)が対象と思われる、ラボノートの書き方です。 
ラボノートの書き方 
「なんのためにここまで細かく、糊の種類までうるさく言うんだ?」と思われるかもしれませんが、一つ一つ妥当なことばかりですよ。
こういうことを積み上げていった先に、大学院修士課程・博士課程・その後の研究生活があるわけです。