ユニクロ製品には、かなり長い間、たいへんお世話になってきました。
魅力の一つは、当然のことながら安さでした。
さらに、安さ以上の魅力がありました。着る人を選ばないシンプルな形状と豊富なカラー展開。
「しまむら」商品は、私にとってはややデコラティブすぎ、かつ流行に敏感過ぎて、使いにくかったのです。流行を取り入れたものは、流行が過ぎたら簡単に流行遅れになってしまいますから。10年前・20年前に気に入ったTシャツを未だに着ている私は、3年後・5年後に着づらい服を買うことには非常な抵抗があります。バリアフリーである「しまむら」の店舗が近くにない、という事情もありましたけれども。
ともかく
「ユニクロの大規模店舗に行けば、たぶん、自分の事情に合う一枚が確実に見つかる」
は、自分の生活と猫のケアと仕事と学業、その他もろもろで日常的に目を回している私にとって、たいへんな魅力でした。
店舗に行けるときにサイズと型をチェックしておけば、あとはネット通販でも事足ります。 ますますもって助かりました。
特に上半身のチェックは重要でした。私は肩幅が広く、がっしりした体型をしています。この体型で着ることができ、極端に「型が合わない」ということのない服を探すことには、若くてスリムだった時期から苦労してきました。「かわいい」「おしゃれ」は二の次にせざるを得ませんでした。
切実だったのはブラでした。「バストのトップの位置がまあまあ合うブラ」を探すだけで、いつも一苦労。スポーツブラに限定しても使える製品は少なく、しかも高価です。バーゲンを狙っても一枚4000円程度(1980年代の話です。大学生にとっては大金でした)。
だから、使えるブラを入手したら大事に使ってきました。大学生のときに購入したスポーツブラのうち1枚、今でも使っています。高かったんだもん。
ブラトップという魅力的な選択肢が出現した後も、この事情はあまり変わりませんでした。
そのころ、私は絶望的に貧乏していまして、ユニクロ製品を「高い!」と感じるくらいだったんです。ユニクロより安いブラトップをネット通販で探して買ってみたこと、何回かありました。ところがバストの位置が全く合わず、絵に描いたような「安物買いの銭失い」に。
ユニクロ製品くらいなら躊躇なく買えるようになったとき、ブラトップなら、ユニクロのレディスのLまたはXLだったら何とか、自分の体型に合わせられることに気づきました。
ちなみに、ユニクロがXLのブラトップを製造・販売しはじめたのは、昨冬の話です。
それまでの数年、「ユニクロ製品を買うにも躊躇する」という状態が続いていたわけです。
アウターに関しては、あまりにも見すぼらしいと仕事に差し支えますから、ある程度は投資せざるを得ませんでした。ユニクロ製品にも「こんなゼイタクしていいのか」と躊躇しつつ。
「インナーも、ユニクロクラスに格上げしてもいいかな?」
と思えたのが、去年春ごろなのです。
ともあれインナーに関しては、「おかげさまで助かってます!」です。とりあえずは現在も。

アウターに関しても「おかげさまで助かってます!」でした。
ユニクロのメンズのL(ジャケット類)またはM(カットソー)は、昨年・一昨年あたりまで、私の肩のラインと腕の長さにぴったりでしたから。
レディスなら、カットソーまたはルーズフィットを前提とした製品で体型への合う・合わないがシビアでないものなら、「Lなら何とかなるかなあ(XLがあればベターだけど)」という感じ。
「たぶん着られる服が見つかる」
という安心感は、大きなものでした。
ところが、この事情、最近変わってきました。
メンズでも「自分より細身・なで肩の人が前提とされているのでは?」という感じになってきたのです。
「着られる」サイズと型だから選んできたのに、その型が自分に適さないのなら、どうしようもありません。

さらにデザイン。
着ていく場所や場面を大いに選ぶものが増えてきました。
どう組み合わせても遊び着にしか使えない遊び着類とか。
「この一箇所さえなければ、使える場面が数倍になるのに」という感じの、自分にとっては大変残念なシャツ類とか(買わずに済むからサイフが助かるという側面もあるのですが)。

また、長持ちさせることも難しくなってきました。
私はだいたい、仕事で人に会うときに着る衣類は、少なくとも3シーズンは持たせることを前提にしています。かつてのユニクロ製品は、3~5シーズン持たせることができました。しかし最近のユニクロ製品に関しては
「3シーズンなんて、まったく無理」
という感じです。特にトップスは、2シーズン目の途中で「穴があく」「ちょっとしたことで破れる」というようなことが増えてきた感じがあります。
私のライフスタイルには合わなくなってきたわけです。

おそらく、ユニクロが「売りたい」と考えている対象は、より若い人にシフトしているのでしょう。
より、現在の20代や30代に合わせ、その体型を前提とした製品開発をするようになったのでしょう。
耐用年数も、現在の20代や30代の感覚に合わせているのでしょう。
それが自分の事情に合わなくなった、というだけの話なのだと思います。
もともと、
「ファストファッションを安く生産、薄利多売、さっさと買い替えていただく」
というビジネスモデル自体が、私の価値観・ライフスタイルに合いません。
その傾向が、さらにハッキリクッキリ見えてきただけなのでしょう。

いきなりの「ユニクロ離れ」は無理ですが、少しずつでも代替を見つけ、ゼイタクではなくとも「良い」と思える衣類を大切に使い続けるようにしたい。
そんなことを、改めて考える今日このごろです。
そのためには、妥当な対価という感覚を持つ必要があります。
では、衣服の場合の妥当な対価とは、どの程度なのでしょうか? 
たとえばTシャツ一枚は、いくらであることが適切なのでしょうか?
その時、どのようなTシャツを前提とするのでしょうか?
現在の日本では、誰にとっても即答の難しい問いでしょう。
私も、即答できません。

ユニクロが破壊してしまった「妥当」という感覚を、私はまず、自分の中で再構築しなくてはならないと思うのです。
しばしば問題となっているユニクロのブラック労働も、「妥当」が破壊された結果の一つです。
将来、ブラック労働に効果的な「No」を言うためにも、私はまず自分の中の「妥当」を再構築しはじめることにします。
今持っているユニクロ製品は捨てずに愛用し、他の人から見えるように着用しつつ。



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