みわよしこのなんでもブログ : ニュースクリップ

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ライター・みわよしこのブログ。猫話、料理の話、車椅子での日常悲喜こもごも、時には真面目な記事も。アフィリエイトの実験場として割り切り、テーマは限定しません。


ニュースクリップ

[ニュースクリップ]2020年8月26日の東京新聞朝刊から 

 2020年8月26日の東京新聞(紙フォーマットの電子版)朝刊から、独断と偏見で4記事をピックアップ。なお、本記事はnote記事の下書きを兼ねています。

  • 「廃炉ビジネス」 地元企業 参入進まず(第4面)
 東京新聞の特色の一つでもある「こちら原発取材班」面の記事です。
 敦賀の「原発銀座」の原発が相次いで寿命を迎えたものの、廃炉ビジネスへの地元企業の参入が進まないということ。大きな理由は次の2点。

・長期(20~30年)にわたる作業であるわりに1年あたり10億円程度で儲かりにくい(原子炉回りは別途、高額の報酬で大手企業が受注とのこと)
・工事は細切れにされて発注され、発注時期は開始の1.5ヶ月前。地元企業ではやりくりが間に合わず対応しにくい

 識者コメントとして、英国セラフィールド原子力施設で住民と企業が廃炉について話し合った事例が挙げられています。

私見:これだけ地元企業に不利な条件が揃っていれば、地元企業の参入は進まないでしょうね。意図的に「地元にお金を落とす」という方針のもとで制度を作っても良いのではないかという気がします。
 英国の事例は、先進国のすぐれた事例なのでしょうか。日本で地元の原発に関する話し合いがされてこなかったのは、なぜでしょうか。原発の立地決定や建設にあたって、実質的な話し合いが徹底して排除されてきた経緯から振り返ってほぐす必要はないでしょうか。その地域のその原発の歴史を、あらゆる関係者が集まって検証する必要があるのでは。その時、住民こそ主役ではないでしょうか。

  • 男性育休促進へ給付金増(総合面)
 妻の産後4週間にわたって賃金を100%保証する男性育休を、厚労省が検討中。財源は社会保険料。

私見:制度自体には好感です。しかし、利用できる男性(+その妻子)と利用できない男性(+その妻子)が、くっきり分かれそうです。中小企業で職場や現場にいないと話にならない職種の場合、実質的に利用できないでしょう。間違っても「家庭を持ち子育て出来る階級」「それ以外の階級」の分断につながらないようにしてほしいと思うのですが……日本に期待するのが間違い?


  • 障害者の「みなし雇用」 導入求める声(暮らし面)
 企業が業務を障害者作業所等に委託した場合、発注額の一定比率を障害者雇用率にカウントする「みなし雇用」について、制度化してほしいという声がある。障害者雇用がなかなか進まない企業からは、制度化待望の声が多い。現在すでにある制度には「特例子会社(障害者雇用を主目的とした子会社)」がある。
 障害者の状況に詳しい慶大教授の中島隆信氏は、特例子会社に清掃や単純作業をさせる事例をあげて問題視し、障害者が理解あるスタッフに見守られてマイペースで働ける「みなし雇用」のメリットを挙げる。厚労省は「福祉的雇用から一般雇用への意向が進まなくなる可能性がある」という理由で消極的。

私見: そもそも「なぜ社会面でも経済面でもなく、暮らし面?」という疑問があります。これが日本の現実だと突きつけられて涙が出そうです。いいかげんに、障害者雇用だけを切り出して議論するのではなく、あらゆる雇用や働き方の中に、「障害」という背景のある人の働き方も位置づけて議論しなきゃ。
 新型コロナと緊急事態宣言のもとでは、テレワークしたくても出来ない職種の人々が子どものケアを含めて困惑したわけです。想定外の働き方が文字通り想定外だから、対応できなかったわけですよね。障害者雇用がの想定している内実があまりにも貧弱であることの問題は、その「想定」のメニューを増やすことで解決できる部分もあるかもしれませんが、結局、どのメニューにも当てはまらない人が取りこぼされるだけです。解決されるべき社会課題を見出すとすれば、そこでしょう。


  • 義足の私たち 輝く姿 12人ファッションショー(社会面)

 東京パラリンピック開会日だったはずの8月25日、義足の女性たち12人がファッションショー(無観客)に出演。義足を隠さないファッションショーは、「切断ヴィーナスショー」と呼ばれ、5年前から全国各地で開催されている。12歳で片足を切断して以来、18歳になってこのショーではじめて義足を隠さずに人前に出た女性も。

私見: これまた、個人的にはゲンナリする記事でした。
 メガネも杖も車椅子も義足も補聴器も、その人が生きて暮らすために必要だから、その人とともにある道具ですよね。特別視したりしなかったり、好奇の視線を向けたり向けなかったり、差別の対象にしたりしなかったりするのは、周囲の人々の行為。その人やその道具ではありません。
 私がゲンナリしたのは、記事の見せ方が典型的な「障害の個人モデル」になっている点です。あくまでも「義足を見せるか見せないか」という本人の問題に注目されています。「なぜそれが、イマドキまだ問題になりうるのか」という社会の問題、障害の社会モデル的な問題意識は、少なくとも私から見て「十分に触れられている」とは感じられません。
 障害の社会モデルは世界に出現してから30年以上経過しており、国連障害者権利条約の形になってから10年以上、日本が障害者権利条約を締結してから5年以上経過しています。「いやまだ、紙の新聞の読者さんに読ませるには、こうでなくちゃ」と言われそうですが、2020年現在の日本で、最も人権問題に鋭敏と考えられている全国紙が、なぜこうなんでしょうか。新聞や雑誌、図書館などの社会教育施設、学校教育を含めて、ありとあらゆる教育の怠慢だと思います。
 義足と女性たちについて? サイボーグやロボットが出てくる特撮やアニメに馴染んで育った私にとっては、人間の身体が一部機械であることには特段の感慨はないです。本人がスタイリッシュで高機能なものを選択したければ無条件に可能になってほしいです。日本の公的福祉で交付される範囲だと、もう、ほんっとに貧乏くさいですから。そして、ご本人が見せたいように(見せないことを含めて)見せればいい。その阻害要因となっているのは、「公費なんだから、ダサくて最低限の補装具で我慢しなさい」という論理がまかり通ってしまいがちなことであったり、好奇の視線を含めて差別がまったく容認されている日本人と日本の制度であったり、そもそも日本の法律に差別の定義が存在しないことです。
 私はカッコいい障害者イメージよりも、そういった基本的な社会課題をどうにかすることの方に関心があります。でも、新聞や新聞の読者さんたちは違うようですね。

  • ウンザリしながらも
 紙の新聞の作り手と読み手が考えているニュース記事の重み付け、その人々の見方や考え方を知るために、紙の新聞はやはり捨てがたいものです。
 ウンザリする日があるからといって購読を止めることはありません。余裕があれば、東京新聞に加えて日経新聞、さらに余裕があれば、朝日・毎日・読売のどれかを月替りで購読とかしてみたいものです。やはり紙フォーマットの強みってありますから。
 私が生きてる間に、新聞にうんざりする日がなくなるか。それとも、新聞がなくなるか。
 知ーらないっ、と。


[ニュースクリップ]なぜ、モーリシャス重油流出事故の報道が少ないのか

2020年7月26日(日本時間)、モーリシャス沖で日本の大型貨物船が座礁して重油が流出した事故、私が購読している海外メディアでは、かなり大きな扱いです。しかし、日本のメディアでの報道は「なぜ?」と疑問が持たれるほど小さい感じがします。そこで、世界でどのように報道が拡大していったか確認してみました。なお本記事は、note記事の下書きを兼ねています。

 Google検索で日付を指定して検索してみると、座礁から数日間に見られた報道は、現地ローカルメディア、海運業界メディアなどに限定されていたようです。「ようです」というのは、多くは私がちゃんと読めない言語だからです。

 8月6日、燃料油が流出しはじめると、世界のメディアでの報道が少しずつ見られるようになります。

 8月7日、フランスのブランド新聞「ル・モンド」に記事が現れました。フランスでは、かなり大きな社会的反応があったようす。

 8月8日、世界の大手メディアが続々と報道し始めました。ニューヨーク・タイムズなど。内容は、美しい海に座礁船から黒い油が流れ出しているようすを上空から撮った写真、環境への影響、モーリシャス政府の環境非常事態宣言など、非常に似通っています。おそらく、ロイターはじめ通信社から提供を受けた記事なのでしょう。これは、世界のどこでもメディアの普通です。世界のあらゆる場所に特派員を常駐させ、あらゆるテーマを取材しつづけられるメディア企業はありません。こちら、本家ロイター記事

 以後、数多くの報道が続いています。日本以外では。



 とはいえ、この日以来、日本でもポツポツと報道が現れはじめました。たとえばNHK(記事Web Archive)。
商船三井運航の貨物船 モーリシャス沖で座礁 大量の油流出
 2020年8月8日 12時30分
7月下旬、日本の海運大手、商船三井が運航する貨物船が、インド洋の島国モーリシャスの沖合で座礁し、現場の衛星画像から、周辺に大量の油が流れ出ていることがわかりました。商船三井は、関係当局と連携して対応するとしています。
 なんともいえない他人事感が気になりますけれども、とにかく報道は現れました。しかし、扱いが小さいんですよね。

 私が愛読している東京新聞電子版(紙の新聞のフォーマット)でも、間違っても第一面にデカデカと出るわけではなく、第二社会面や国際面にチラホラ。数多くのニュースがある中で「これを特に」と言えない事情があることくらいは想像つきますが、それにしても「このニュースがモーリシャス沖の日本船の原油流出事故より優先されるべきなのかなあ?」という疑問を抑えきれません。8月14日、15日、16日は記事ゼロ。

 Webでニュースチェックしている人には伝わっているのでしょうか? どうも、それも期待できなさそう。国際ニュースとして掲載されてはいるのですが、扱いが慎ましすぎる印象です。

 本日8月16日夕方、「東京新聞 TOKYO Web」のトップページには、この重油流出事故のニュースそのものが見当たりません(PDF)。ただし国際ニュースとしては、さすがに取り上げられています(PDF)。

 

 今、紙の新聞を買ったり図書館で読んだりして比較する余裕がなく残念ですが、他紙も似たりよったりではないかと思われます。朝日新聞の「Asahi.com」では、一応はトップページに存在します。ただ、意識して読もうとしないと気づかない感(PDF)。

 良い意味で異色を放っているのは、NHKです。
 8月16日夕方、「NHK NEWS WEB」のトップページに、気づかない人の方が多そうな配置ながら、ピックアップニュースとして写真が掲載されています(PDF)。さらに国際ニュースを見ると、目立ちませんが、記事はあることはあります(PDF)。
 この記事は、8月16日17時台のアクセスランキング5位でした。
       NHKランキング

 「読まれるべき記事が読まれるようにしたい」というNHKの中の方々の思い、それに応える読者さんたちの思い。嬉しいじゃないですか。ただ、NHKニュースが情報源の中心になっている方々に、どの程度届いているのか。TV持ってない歴37年目の私には分かりません。

 世界的な関心は、当初よりは若干下がってきた感もありますが、かなり注目されているニュースです。

 こちら米国の CNN International トップページ、8月16日夕方。
 国際記事のコーナーではありますが、やはり目先の大統領選挙と関係する半分内政のような記事が大きく取り上げられています。しかし、そういった記事のすぐそばに、この重油流出事故のニュースが現れます。「これオオゴトなんだから、関心を持ってもらわなきゃ」という「中の人」の思いが透けて見えるようです。

 20200816_CNN_International

 こちらBBC。国際ニュースではなく一般ニュースの中ですが、少しスクロールすると出現します。目を引く写真つきで。

20200816_BBC

 これだけの国際的大事件、しかも「日本が世界の世間様にご迷惑をおかけしまして」という事件でありながら、なぜ日本ではこんなに報道されないのか。不思議です。

 当事者である商船三井は、ごく当たり前と考えられる対応をしています。

当社運航船 座礁および油濁発生の件(2018年8月7日)

(筆者注:座礁した「わかしお」は)日本時間7月26日(日)にモーリシャス島沖で座礁により船体が損傷し、救助作業中の8月6日(木)に燃料油が流出しました。これにより現場海域・地域に甚大な影響を及ぼしています。

 当社は座礁事故発生後より社長をトップとする海難対策本部を立ち上げ、日本およびモーリシャスをはじめとする関係当局と連携して対応しています。また、現地への早期要員派遣を含め準備しています。当社は、引き続き船主や関係者と協力し、早期の事態解決に向けて全力で取り組みます。

WAKASHIO 座礁および油濁発生の件(その2) 2020年08月11日

 座礁した船の状況、行っている重油除去作業が説明されており、末尾に用語解説があります。
(ご参考)
お問い合わせを多くいただいている「船主」「運航」の意味について、以下の通り記者会見より抜粋し補足します。
船主とは、「本船を建造、所有し、乗組員を乗船させ、荷物を運べる状態にする。それにより、運航者である用船者(商船三井)に提供している」
用船者とは、「一定期間、船主(長鋪汽船)から船を借り、荷物を付けて輸送する。『運航』とは船を実際に動かしているのではなく、『どこの港へ行ってください』などのお願い、指令をすることを指す」

 責任範囲を明確にするために用いられる業界用語に対して、「責任逃れか」といったクレームでも殺到したのでしょうか。いずれにしても「素人さんが読むのだ」ということを意識したプレスリリース。その点では好感度大です。「記者会見で用語解説した」という記述があるところから、ふだん、記者向けにそのような配慮をしている様子も伺えます。

 プレスリリースは、その後も続いています。

WAKASHIO 座礁および油濁発生の件(その3)2020年8月13日
WAKASHIO 座礁および油濁発生の件(その4)2020年8月16日

 必要な情報開示は行い、新型コロナのせいで活動が制約されている中で、出来ることはやっている印象を受けます。ただ、国家賠償といった事態に発展する可能性はあるでしょうね。
 いずれにしても、日本の大メディア各社から「商船三井を守らなくては」といった意図を見出すのは、難しいように思えます。すると、「何か差し障りがあるわけではないのに報道されない」ということになります。

日本の報道が少ない理由は、今のところは謎

 もちろん、「他にも報じるべき事件事故がたくさんあるから」という理由は大いに考えられます。戦後75周年、戦争を知る方々の高齢化を考えると、とにかく風化させないことが大切。というわけで、8月に入ると、日本の多くのメディアが終戦記念日モードへと舵を切り、直接知る世代に取材した記事、忘れられかけている史実に光を当てた記事を多数掲載しています。それはそれで、必要かつ重要なことです。

 しかしその事情は、世界のどこでも同じです。8月4日にレバノンで大爆発事故が起こり、その直後は、国際ニュースの半分くらい(体感)が、この爆発事故に関する報道でした。でも世界のメディアは、たった2日後に始まった座礁船からの重油流出も、それなりの重みをもって報道しています。

 日本、何が違うんでしょうか。
 謎です。

[メモ]ALS嘱託殺人に関して報道されていないけれど気になることがら

いつものように、note記事の下書きを兼ねています。

 2020年7月に報道が開始されたALS嘱託殺人(発生は2019年11月)に関して、報道は概ね、以下の5点に集中しているように思われます。
  1. 容疑者の医師たちが異常
  2. 呼吸器をつけて明るく楽しく生きている人たちがたくさんいる
  3. 安楽死の是非、安楽死の議論を行うことに関する是非
  4. 周辺の人々(介助者や支援者など)の記憶や思い
  5. 亡くなった林優里さん(当時51)の人となり
 どうも、私には違和感があります。

1. 容疑者の医師たちは異常なのか?

 「死にたいなら殺してあげますよ」という人なら、恐らくいつでもいます。2017年の座間9遺体事件もそうだったし。1998年には、「ドクター・キリコ」を名乗る人物が青酸カリ入りのカプセルを通販し、実際に飲んで自殺した女性がいました。当時、SNSはまだ出現していませんでしたが、「自殺系サイト」は珍しくありませんでした。



2. 呼吸器をつけて明るく楽しく生きている人は確かにいるけど?

 呼吸器をつけて、大変ながらも楽しい毎日を送っている方々は、私の直接知る範囲に多数います。
 そのお一人である練馬区の橋本みさお(日本ALS協会相談役)さんは、身体の状況は亡くなった林優里さんと同様ですが、人工呼吸器を装着して大活躍。ヘルパーが痰の吸引をできるように制度を創設するなど、最重度の障害者が生きて暮らせるように社会を変えてきたお一人です。
 それだけではなく、派手で可愛い服に身を包んでアイドルグループの追っかけを楽しみ、時には高級レストランで胃ろうから美食とワインを楽しみ、犬のポンちゃんのしつけに苦労していました(ポンちゃんは高齢のため既に他界)。
 私の身体障害が発生したとき、ALSも疑われていました。どういう病気か知らなかったのでネット検索してみると、最初に見つかったのが橋本みさおさんの暮らしぶりでした。こんな楽しそうな暮らしが最悪の可能性なら、何を恐れる必要があるでしょうか。私はヘラヘラ楽観的になってしまいました。楽観的なので、障害や難病に嘆き悲しむ私を期待する周辺の人々との間に軋轢が引き起こされることになり、むしろ私はその軋轢に困惑したものです。
 しかし、橋本さんのような暮らしは、全身の運動能力を奪われた難病患者や障害者の全員に対して「当然の権利」として与えられるものではありません。自ら支援者や介助者を組織し、行政に立ち向かうことの出来る人々だけが獲得できるものです。まだまだ、例外的な少数の人々が道を切り開いて「既成事実」を作っていかなくては、現在は生きられている人々まで生きられなくなるのが実情です。日本の障害者の間では、「障害者は、生きるために障害者運動家にならざるを得ない」と言い伝えられてきました。程度の大小はともあれ、それは2020年現在も事実です。
 問題は、障害者運動家として生きる道を切り開いていく「例外的な少数」に入れない人々、あるいは、障害者になったために否応なく押し付けられる運命や宿命の数々が存在することを受け入れられず、したがって「生きることを諦める」ということになる可能性の高い方々です。「障害者になったら特別な何かをしなくては生きていけない」という現実は、私自身にとっても未だに受け入れがたいものです。適応しなくてはならない現実だし、適応してきたから今があるわけです。でも、それで良いとは思っていません。



3. 安楽死の是非、安楽死の議論を行うことに関する是非

 生の選択肢の一つとしての「安楽死」は、私は「アリ」だと思っています。だから、実質的に選ぶことも選ばないこともできるようにしてほしいと思います。「安楽生」は選べないけど「安楽死」なら選べるというのでは、消極的に自殺を奨励しているようなものです。
 ところが現在は、闘う障害者、せめて道を切り開くリーダー的障害者にならないと、「安楽生」どころか「生きる」ことが実質的に選べないわけです。この状況を変え、障害者になったら誰もが安楽に必要な支援と資源を得て楽しく生きられるように、そういう障害者たちが頑張っているわけです。現状がこのようである以上、多くの障害者にとっては、生きて暮らしながら享受する「安楽生」の数々の選択肢の端っこに「安楽死」という選択肢があるわけではなく、生きて暮らすだけで消耗する日常から降りたいと思ったら死ぬしかなくなるわけです。
 私から見れば、安楽死を議論する以前の問題です。現状も現実も充分に知られていません。安楽死を希望する障害者たちのSNSでの発言を見ると、確かに苦痛や不安に満ちています。最初にすべきことは、何がその苦痛をもたらしているのかを見極め、苦痛や不安を減らしたりなくしたりするために必要なもろもろを提供することではないでしょうか。生きることを容易に可能にするための議論は、安楽死の議論に比べて、あまりにも不足しています。



4. 周辺の人々の記憶や思い

 林さんが嘱託殺人によって亡くなった以上、周辺の介助者や支援者が林さんに「この楽しい人生を明日も生きたい」と思えるようなケアや支援を提供できていなかったことは、事実として認めるべきでしょう。
 何がどのように欠落していたのか。あるいは、どのように、あってはならない虐待などの出来事があったのか。その視点からの検証が、少なくとも現在までの報道には見当たりません。
 とはいえ、報道機関がコメントや参考情報を求める対象は、生きて道を切り開くALS患者さんや介助者や支援者や家族にならざるを得ないでしょう。ALSの介助に対応できる介護事業所やヘルパーさんは、非常に少ないという現実があります。これ以上減ると「現在は地域で生きて暮らせているALS患者さんが、施設にはいらざるを得なくなる」といった成り行きも想定されます。コメントや参考情報が、辛うじて支え合っている介助者や支援者や家族の小さなコミュニティからしか出てこないことは、どうしようもありません。せめて「そういうものである」と理解し、「実はどうなのか?」を照らし出せる別の誰かの視点からのコメントを添えるのが、現状では精一杯でしょう。



5. 亡くなった林優里さん(当時51)の人となり

 ご本人は既に亡くなっており、深堀りしても新事実が出てくるわけではありません。
 私から見ると、林さんにとっての障害者福祉の使い心地が大変気になるところです。日本の福祉制度の多くは、社会的弱者に対する「これだけは、してあげる」という恩恵的な発想から脱しておらず、「基本的人権を無条件に保障する」というものにはなっていません。林さんのような高学歴キャリア女性は、想定範囲に入っていません。制度の「あなたのような障害者は想定していない」という言外のメッセージは、林さんにとってどのように感じられていたのでしょうか。高学歴で留学歴もある専門職、しかも今はALS患者ということで、あまりにもマイノリティになりすぎてしまったゆえの苦痛はなかったでしょうか。
 周囲の方々は、林さんに気遣いをされていたけれども気づいていなかった可能性が高いと思われます。その方々から聞き取っても、おそらく何も出てこないでしょう。



障害者コミュニティの「外」の方々に期待しています

 「このまま、林さんご本人の声はヴェールに隠されたままになってしまうのか」と思っていた8月4日、江川紹子さんのご記事に、「おおっ」と思いました。Yahoo!ニュースじゃないから安心して読めて、助かります。

【ALS患者・嘱託殺人】亡くなった林優里さんの発信が投げかける、社会への重い課題

 私の「おおっ」を抜き書きします。

 難病に限らず、「死にたい」という言葉は、「生きたいのに生きられない」というメッセージでもある。今回のケースについても、「どうすれば彼女は生きられたのか」との議論が必要だろう。

 死への願望がある種のタブーにされ、亡くなった林優里さん(当時51)の声がメディアであまり伝わっていないのは、それはそれで気になる。彼女のSNSなどを読むと、同じ難病の患者などと対話をしながら、患者自身の“命の権利”を訴え続けていたことがわかる。今回は、その発信から、彼女が社会に投げかけた重い課題を考えたい。

 死への願望をタブーとし、困難ななかでも前を向いて懸命に生きる人ばかりが登場するメディアの報じ方には、いささかの疑問を感じている。それで私たちは、本当に課題の重さを感じ取ることができるのだろうか。

 林さんは最後まで精神的に自立した日々を送っていた。「安楽死」を望んではいたが、それは自分の生を主体的に生きることの延長線にあり、背景には「心の安堵と今日を生きる希望」を切望する思いもあった。

 抜き書きした部分からは、「障害者と介助者と支援者のコミュニティの中で障害者が生きざるを得ないことについて、江川さんは実は詳細を相当ご存知であったり、解き明かさなくてはならない謎だと思っていたりされるのかも」と期待したくなってしまいます。ブログとツイッターに残された林さんの言葉も、丁寧に読み込まれています。難病や障害の当事者の方々から、江川さんは早くも期待されているようで、「安楽死の法制化 江川紹子さんとつながる」というmixi日記に一端が示されています。

 障害者のコミュニティの外からの視線が、「前向きに生きれば道は開ける」と「安楽死は認められるべき」ばかりでは困ります。まったく外の立場から、障害者が生きて暮らすことの現状を明らかにし、「死にたい」を増幅する要因は何なのか明らかにする記事がもっと増えることを願っています。

[ニュースクリップ]2020年8月10日 東京新聞朝刊より

昨日2020年8月9日は、長崎原爆忌でした。出席した安倍首相には、2020年8月6日の広島原爆忌と同じあいさつを使いまわした可能性が取り沙汰されています。しかし、紙面レイアウトで新聞を読むということの最大の意義の一つは、「SNSを流し読みしているだけでも話題になっていて概略がわかるニュース以外のニュースを読むことになる」ということです。
ともあれ、8月9日の翌日の朝刊を読んだら、まず原爆忌のニュースに触れないわけにはいきません(いつものように、note記事の下書きを兼ねています)。

  • 「長崎原爆の日 核 コロナ 私たちの脅威」(一面)
非常に大きな扱いの記事です。高齢化する被爆者たちや長崎市長による核軍縮への願いとともに、安倍首相の姿勢が次のように示されています(下線は筆者による)。
安倍晋三首相はあいさつで『非核三原則を堅持し、立場の異なる国々の橋渡しに努め、核なき世界の実現に向け国際社会の取り組みをリードする』と述べるにとどめ、式典後の記者会見で核禁止条約に参加しない考えを改めて表明した。

私見:
あの、矛盾してるんですけど? 「非核三原則を堅持」「核なき社会の実現に向けて世界をリード」するのなら、「核禁止条約に参加する考えを表明」じゃないとおかしいですよね。スピーチライターさん、大丈夫? スピーチで「非核三原則なにそれおいしいの」「核はなくせないよ」と言わせておかなくちゃ(皮肉)。そうすれば、記者に本音を言ってしまっても、論理的に整合します。広島や長崎なら石ぶつけられるかもしれないけど、熱狂的に支持するファンには好評でしょう。


  • 自衛隊に電子戦部隊(三面)
見出しだけ見ると「サイバーセキュリティの話か」と思ってしまうのですが、そうではなく「電波や赤外線を駆使して攻撃を防ぐ」「侵攻勢力の電波を妨害し無力化」するための専門部隊のようです。相手の通信を妨害して自分の通信を守るサイバーセキュリティ的な要素も含んでいます。
部隊の編成と設置は、2021年春、熊本県の健軍駐屯地に予定されています。しかし既に装備が導入されていたり、専門家育成が開始されていたり、開発費(150億円)や研究費(38億円)が予算化されていたりします。

私見:
福岡県出身者としては「なるほどね(ニヤリ)」だったりします。廃藩置県以来、福岡県と熊本県の意地の張り合いは大変なもので、省庁の九州支局は引っ張り合いになりました。総務省の九州総合通信局が熊本市にあるのは、その名残です。というわけで、九州なら「熊本に」ということになるのでしょう。福岡市はいろいろ集中しているから、危機管理のための分散という意味でも熊本のほうが良いかもしれません。
いっそ、もう、戦争は全部eスポーツか国家首脳どうしのジャンケンに置き換えてほしいものです。五輪は少なくともeスポーツだけは必ず開催ということにして、文字通りの世界平和の祭典にしてほしいです。

  • 自宅で診察から薬処方まで 政府、オンライン化に本腰(三面)
7月に取りまとめられた「骨太の方針」に明記されている、行政・教育・医療分野のデジタル化やオンライン化の推進方針です。医療については、診察から薬剤の受け取りまでオンラインで完結する仕組みを構築し、同時にマイナンバーカードを核として個人情報の一元化を進め、同カードを2021年3月から健康保険証として使えるようにするそうです。現在は新型コロナの院内感染を防止するため、2020年4月から電話や動画通信によるオンライン診察が初診から認められています(以前は初診はNGでした)。この特例は当面継続される見通し。しかし、日本医師会は慎重姿勢を示しています。重い腹痛・目の外傷・アレルギー性疾患など、オンラインでは見極めできない症状もありますから。

私見:
オンライン診察、ほんっと助かってます。私の持病のかかりつけ医療機関の1つは関西にあり、大学院リアル通学のついでに受診していたのですが、オンライン診察で済めば交通費が浮くし、関西に行く必要がないので必要に応じて受診できるし。
しかし、今回の政府方針には「んんん?」です。「マイナンバーカード」というキーワードを見たら、警戒しちゃいますよ。各省庁等のデータを一元的に扱うために必要不可欠なのは、わかります。違う基準で個人が識別されている表をツギハギする危険性は、データベースをちょっと扱ったことがある人なら「うんうんうん!」でしょう。でもさ、もう役所内部ではマイナンバー使ってるじゃん? なかなか皆さんが「マイナンバーカード」を持ちたがらないのは、銀行のキャッシュカードやクレジットカードを1枚紛失しただけでも大変面倒くさいことになるのに、「1枚なくしたら個人情報のすべてが、どうなるんだ。あああ」というカードを持ちたくないからだと思うんですよ。それに、効率化するんだったら、多くの国民に警戒されている「全員にマイナンバーカードをもたせる」ということからではなく、情報漏洩リスクを増やすことではなく、FAXとかFAXとかFAXとか、個々の役所の内部とかからじゃないかと思うんだけど?
一個人としてオンライン診察の利便性を享受し、新型コロナウイルス感染のリスクを回避するために、何かを犠牲にさせられる必要はないと思うのです。マイナンバーカードを持つことについては、私は超超超超、慎重になりたい。行政が預かっている自分の個人情報が漏洩した時、自分のマイナンバーカードが最初に疑われるんじゃ、たまらないし。


  • 「2020年米大統領選 攻防・投票率(下)」と「バイデン氏 また失言」(外報面)
「2020年米大統領選 攻防・投票率(下)」は、短期連載の最終回です。現政権に有利になる選挙のルールいじりは、もちろん、米国でも行われています。新型コロナ対策のため投票所が減らされ、さらに新型コロナ対策のため同時に投票所に入れる人数が減らされていると、屋外で4時間待ってやっと投票できることもあります。前回まで、そのような現実の存在が示されてきたところ。さて、これからはじまる大統領選はどうなるか。
1996年以来、米国では郵便投票が拡大してきています。2016年の大統領選では21%~24%(調査主体による)。新型コロナ対策としても有効でしょう。しかし、手続きが面倒くさいと、それだけで利用されにくくなります。
米国の全50州のうち、全有権者に投票用紙や申請書が郵送されてくるのは17州。他25州でも、郵便投票は幅広く利用できます。しかし8州は、兵役や病気など厳格な条件があります。
リアル投票には、そもそも投票妨害がつきもの。「投票妨害に苦しむ黒人有権者らマイノリティー(人種的少数派)は、(筆者注:投票所が減らされて)投票機会が一層狭まることが懸念されていた」とあります。トランプ大統領は「不正が横行する」「外国に介入される」などと主張して、郵便投票に反対しています。しかし共和党幹部ですら、郵便投票に対するトランプ大統領の姿勢を疑問視しています。とはいえ、郵便投票の集計や確認作業は通常の投票より時間がかかるし、混乱も起きそう。紛争になったら決着まで長い時間がかかる可能性もあります。
「バイデン氏 また失言」は、バイデン氏が記者のインタビューに応じて「ヒスパニック社会は(黒人社会に比べて)多種多様」と発言した件です。5月のラジオ番組でも「(投票するにあたり)私かトランプ氏か迷うようなら黒人じゃない」といった発言をしています。人種差別的な発言を繰り返していると、大統領選はどうなることか……?

私見:
選挙妨害、ハッとしました。見た目でわかるマイノリティがヘイト・クライムや弾圧に遭いやすいことは、米国だけではないし、よく知られている事実です。しかしながら、選挙行動でも妨害に遭いやすいとは。意外ですが当然でしょう。投票日、投票待ちの行列が出来ているところに爆破予告でもあったら、それだけで相当数の投票者が、少なくとも「その日は投票できない」ということになりかねないわけですよね。「この投票所で黒人(例)が投票できないようにすれば結果が変わるぞ」とかいう時に、腹黒く恐ろしい企みがなされたら……考えたくありません。郵便投票やオンライン投票は、公正さを担保するのがリアル投票よりも難しいのではないかと思いますが、実のところはどうなのでしょうか。
バイデン氏の人種差別的発言については、米国メディアが修正したりトーンダウンしたりせずに報道しているところに、日本より成熟した民主主義の存在を感じます。米国は、ラジオの生放送でも電波に乗せる前に数秒の遅延を設けています。なにしろ、ピューリタンが作った国ですから。子どもに聞かせられない用語は「ピー」しなきゃ。ゾーニングを徹底した上での「表現の自由」です。でも、バイデン氏の問題発言は、そのまま電波に乗り、または記事に出ているわけです。しかも、必ずしも「そのメディアや読者層が、トランプ氏2選を期待しているから」というわけでもないし。米国の理解は、まことに一筋縄ではいきません。
さて、人種差別するトランプ氏か。トランプ氏に比べればマイルドだけど人種差別しそうなバイデン氏か。そこにコロナ禍への対応や経済が絡む中で、米国選挙民が迫られる究極の選択。これから約3ヶ月、日本から関心を向けながら横目で見守ることになるでしょう。

[ニュースクリップ]2020年8月8日 東京新聞より

前回は2020年8月3日。5日も空いてしまいました。週イチでいいから習慣化したいと思っているニュースクリップです。note記事の下書きを兼ねています。

 本日の東京新聞朝刊(Web配信される紙の紙面データ)は、紙だからこそのレイアウトの妙が光ります。

  • 「ワクチン開発 焦り禁物 免疫学の第一人者 警鐘」と「検証・コロナ対策(第12回) 専門家押しのけ 宣言解除」(一面)

 日本政府の専門家軽視は、今に始まった話ではなく、新型コロナ限定の話でもありません。生活保護政策は、戦後ずっと、その時期の第一人者である研究者たちを集めて委員会や検討会を設置し、その意見をテキトーにつまみ食いして決定されてきています。
 それにしても、新型コロナに必要とされる対策の励行や経済活動への制約、そして直接間接の打撃の数々には、多くの方々が「疲れたよ、パトラッシュ」と言いたくなっていることでしょう。ワクチンには期待がかかります。特に政府は、大きな期待を寄せているようです。来年の東京五輪がかかってますからね。
 しかしコロナウイルスのワクチンに対しては、今年2月や3月あたりには、私の汁専門家たちから「本当に有効なワクチンは作れないのではないか」「有効なワクチンが出来たとして、コロナウイルスワクチンとインフルエンザワクチンの食い合わせになり、インフルエンザがワクチン接種で発症するとかいう救いのない事態にならないか」といった懸念がありました。そういう懸念を払拭すべく、医薬品の承認には然るべき手順が定められています。その手順をごまかしなく最短で踏むと、最短で2年かかります。ということを、免疫学の専門家中の専門家である宮坂昌之氏が語っています。
 その記事の真下に、連載「検証・コロナ対策」第12回があります。この連載は、毎日リード部分が第一面に掲載されており、今日が例外だったわけではありません。しかし、今日の内容は、安倍首相が緊急事態宣言を全面解除する可能性を5月21日に示したことに関するものです。専門家会議(当時)には「28日に判断する」と伝えられていましたが、専門家たちの意見を求めることもなく、経済面への考慮から前倒しして判断したわけです。その後、専門家会議は廃止され、経済の専門家を含む分科会が発足しています。

私見
 新しい分科会が政府協賛しかしないであろうという懸念は、どうも、そのとおりになりつつあるような。ため息をついて視線を上に動かすと、ワクチンへの期待に関する専門家の懸念がドドーンと目に入るわけです。関連づけて表示して読ませることは、Web媒体のほうが得意だと考えられていますし、実際にそうでしょう。しかし「これだけは、頭のどこかに必ず入れておいてほしい」という重要なメッセージを伝える場面では、いまだ紙の優位性が目立っているのではないでしょうか。パピルス以来、人間が手にとって持って目にすることのできる平面上の文字や図表や絵には、生き物としての人間に適するように鍛えられてきたアドバンテージがあります。


  • 連載「雪が落とした災い(第10回・最終回) 仮設暮らし 6年耐えた」と「除染土 覆土せず利用」(二面)
 連載「雪が落とした災い」は、福島第一原発事故で全村避難を強いられた福島県飯舘村の農家を中心とした苦難をつづってきました。2011年5月に避難が始まり、まずは福島市の公共施設に。専業農家の男性(現在76歳)は「やることがないのがつらかった」といい、その施設の草刈りを「やらせてもらった」ということです。放射性物質に汚染された畑で食糧生産を継続するわけにはいかず、メガソーラー用地として貸すことに。福島市と川俣町で畑を有償で借り、営農を再開。そのことで気力を取り戻せたといいます。仮設暮らしは2017年3月末で終わり、飯舘村に戻ってきています。しかし現在も「目の前に自分の畑あんのに、お金出して畑借りてんだ」。
 その下に、飯舘村の除染で出た汚染土の利活用に関する記事。これまでは、汚染されていない土で覆って、食用ではない作物(園芸用・燃料用など)限定で使用するという方針でしたが、環境省が方針を転換し、食用作物に使用するための実験を既に始めているということです。汚染土を覆わず直接、というパターンも試されているとのこと。環境省の未公開文書から明らかに。文書は、龍谷大教授の大島堅一氏が行政文書開示請求で入手。

私見
 福島第一原発事故の直後から、「放射性物質は薄めて流して広げて、福島第一原発の周辺だけが特別というわけではないということにするってか?」と懸念していました。「そういう意図がなければ、やらんでしょ」という対処のオンパレードでしたから。除染も、「あれは除染ではなく移染だ」と言われていました。今度はそこで、食糧生産ですか。作物から放射能が検出されたとき、苦しむのは農家の方々なんですが、補償は考えられているんでしょうか? 福島第一原発事故は、まだ全然「終わった」といえる状態ではありません。引き続き、関心が必要です。2面の上下に並んだ2つの記事に、そう思わせられます。


  • 「売却圧力 TikTok苦境 取引禁止へ 米大統領令」と「バイデン氏も『核なき世界へ』 オバマ氏の目標継承」(三面)
 こちらも紙ならではのレイアウトの妙。バイデン氏の記事は小さめであるにもかかわらず、11月の米大統領選が迫る中での米国の状況がよく伝わってきます。

私見
 個人的には、かなり要注意の「レイアウトの妙」。トランプ大統領が再選される可能性は、かなり低くなってきているとはいえ、米国内の白人を中心に「中国のせいで(アジアンのせいで)自分たちがワリを食っている」「オバマのせいで損をさせられた」という感覚は根強いです。その感覚が刺激される出来事が何かあれば、大統領選は本当にどう転ぶかわかりません。東京新聞の読者層の多くは、どちらかといえば「トランプ大統領に再選されてほしくない」と思っていることでしょう。「だからこそ、情勢判断を誤らないための情報がほしい」と私は思います。元・半導体屋としては、ICT技術の弱点が際立ってきた感もあります。情報産業は、半導体のような巨額の設備投資やランニングコストとは無縁です。そこが急成長や寡占のカギでもありました。しかし実体のあるモノやデバイスのような囲い込みは出来ないわけですよね。「なーに、必要なら結局は買われるよ」という成り行きにはなりにくい分だけ、政治力に弱いのかもしれません。

  • 酒井順子の3冊の本棚(読書面)
今回の3冊は、日本の歴史的「女帝」たちに関する1冊、有吉佐和子『開幕ベルは華やかに』、そしてミステリーの女王こと山村美紗に関する1冊。

私見
 酒井順子さんの視野の広さと深さに唸りました。数々の作品が、いかに表層的に見えても広い背景と深い奥行きを含んでいることの秘密の一端かもしれません。有吉佐和子さんは晩年、タモリ「笑っていいとも」にゲスト出演したとき番組ジャックに近い状況となり、「サワコル」と皮肉られる中で亡くなりました。その事実を書籍等に残している橋本治さんも、既に亡くなられています。日本では結局、女性は日の当たるところに居続けられない現実があることを認めざるを得ないように思われます。酒井さんは、このコラムでジェンダー問題について声高く述べているわけではないのですが、日本で女として産まれて生きることの苦しさ、日の当たるところには所詮居続けられない運命に逆らうことの困難さは、抑えた筆致から浮かび上がってくるように思われました。


おまけ。


  • ひもとき時事ワード「安楽死」(みんなのニュース)
すべての漢字にふりがながあるキーワード解説。7月に明らかになった、2019年11月に発生したALS女性への嘱託殺人容疑を取り上げ、安楽死を「助かる見込みのない病人を、本人の希望に従って、人の手を加えて苦しみの少ない方法で死なせること。日本では認められていません」と解説しています。

私見
 その上には、食糧危機への対応策としての昆虫食に関する詳説があります。たぶん、食糧危機と安楽死を結びつける意図はないのでしょう。でも、ギクっとします。「食糧危機なので高齢者や障害者を死なせて食い扶持を浮かせる、あるいはその人々を食糧などの資源にする」というテーマは、フィクションで繰り返し取り上げられています。また、過去の現実であったりもします。ALSを「助かる見込みのない」病気とすることには、私は抵抗があります。ALS自体は現在のところ治りませんが、快適に長く生きて活動を続けることはできます。日本は、それについては世界のトップレベルの実績を持つ国でもあります。「安楽死はあってあたりまえだ」という安易な誤解を日本に定着させないように、ぜひ、別記事でフォローしていただければと思います。


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「ソフト・エッジ」
(中嶋震氏との共著 2013.3 丸善ライブラリー)


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(共著 2009.10 技術評論社)

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