稲葉剛さんご本人より、ご恵贈いただきました。ありがとうございます。



頂戴したからというわけではありませんが、強くご一読をお勧めします。

生活保護という制度は何なのか。
生活保護を利用している当事者たちは、どのような人々なのか。
生活保護という制度をめぐる政情は、どのような状況にあるのか。その意味は何なのか。
生活保護という制度は、日本の社会の中でどのような位置づけにあるのか。

どういうご関心をお持ちの方にとっても、その関心を満たす何かが得られる書籍であろうと思います。

●生活保護という制度は何なのか

第一章「崩される社会保障の岩盤」だけでもお読みください。
生活保護のせいで「正直者がバカを見る」としばしば言われますが、本当にそうなのでしょうか。
「高すぎる」とも「低すぎる」とも言われる生活保護基準は、どのように決められているのでしょうか?
生活保護制度を縮小することで困るのは、生活保護制度を直接利用している当事者だけなのでしょうか?
生活保護費は「働かずにお金がもらえていいなあ」という性格のものなのでしょうか?
生活保護からの脱却を難しくしているのは、怠惰な当事者なのでしょうか?
さまざまな視点からの意見が紹介され、本当はどうなのかが良く分かります。

●生活保護という制度を利用している当事者たちは、どのような人々なのか

第四章「当事者の一歩」を、ぜひどうぞ。
生活保護を利用している当事者として、身体障害者・元野宿者・DV被害者・精神疾患を持つ人 の4名が紹介されます。その生活史と現在を読めば、生活保護という制度のアウトラインがくっきりと浮かび上がってくるのではないでしょうか?
「真面目な当事者ばかり、わざと集めたんでしょう?」
というイメージを持たれる方も多いと思いますが、「大きな問題のある当事者を探すのはかえって大変」というのは、生活保護問題を追っている私の実感でもあります。

●生活保護という制度をめぐる政情は、どのような状況にあるのか。その意味は何なのか

第一章「崩される社会保障の岩盤」、第二章「届かない叫び声」、第五章「問われる日本社会」に、戦前からの公的扶助制度史が示されています。その歴史的視野によって、今とこれからが浮き彫りにされています。

●生活保護という制度は、日本の社会の中でどのような位置づけにあるのか

いわゆる生活保護バッシングは、日本の「イエ」「ムラ」を重視する人々と、個人をベースとした市民社会を重視する人々の軋轢でもあるでしょう。
第三章「家族の限界」には、生活保護と「イエ」制度・家族というものの関係とそれらの問題点、さらに生活保護法との関連が示されています。

12月4日にも、生活保護法改正案は衆院で(参院先議のため)可決されると見られています。
もし改正案が成立してしまったとしても、生活保護制度にまつわる問題はむしろ、さらに深刻さをもって広がっていくばかりでしょう。
そして、生活保護制度にまつわる問題の背景にある日本の貧困は消えてなくなるどころか、さらに拡大していくでしょう。
本番はこれからです。

本番に備えて、ぜひ、ご一読ください。


 
以下、アファリエイトです。

拙著「生活保護リアル」も、参考文献に挙げていただいております。感謝します。
ソフトカバー(左)、Kindle版(右)、です。