「水際作戦の法制化」をはじめとする批判の多い生活保護法改正案。
さまざまな人々の反対にも関わらず、今国会で成立してしまうかもしれません。
もちろん私も反対しています。どこが改正案なんでしょうか。改悪案です。
しかしその私の身近には、困窮者をさらに痛めつけるような政策は決して歓迎していないにもかかわらず、密かに改正案成立に期待している友人A氏がいます。年収1500万円の企業経営者です。
昔、自分を傷めつけた父親やきょうだいたちを今でも憎んでいるA氏の主張は
「だって、改正が成立したら、扶養義務が強化されて、三親等内の親族に姻族を含めて扶養照会が行くんでしょ? それを利用したら、 あいつらの顔を潰して生活をメチャクチャにできるじゃないか。オレ、生活保護法改正案が成立したら、生活保護を申請するんだ! 倍返しだ!!」
というものです。
彼の目論見には実現の可能性があるでしょうか? あるケースワーカー経験者に尋ねてみました。
--年収1500万円でも生活保護の申請はできるのですよね?
「できます。資産が一億円あってもできます。申請書に必要な書類を添付して提出すればいいんです。必要な書類とは、給与明細、年金、固定資産、預金残高など、資産と収入の状況が分かるもの、それから現住所、住居の状況が分かるものなどです」
参考:「自立生活サポートセンター・もやい」サイトより
「Q&A・生活保護編」
生活保護の申請の実際、必要な書類などが良く分かります。
--この場合も扶養照会は行われるのでしょうか?
「まず申請した時点で、『あなたの息子さん(お兄さん)のAさんが生活保護の申請に来てます』 ということに関する通知が行きます」
--世間体を重視する地方の方々には、それだけでインパクト大きそうですね。
「ただ、Aさんの場合、資産も収入もあるわけですから 、保護開始の決定はされません。だから、親族の収入・資産に対する調査は行われません。あれは『保護を開始しようとする時』に行うものですから」
--うーん。それでは、破壊力はあまり期待できませんねぇ……。
生活保護法改正案に含まれている矛盾や穴をうまく突けば、「ウザいばかりの家族関係を壊す」「キモいだけのコミュニティを壊す」など数多くの「利用」ができそうです。
しかしまあ、そんな利用法のために生活保護法改悪に期待されてもねー、というのが私の本音。
A氏は正攻法で、自分を痛めつけた家族に対する「倍返し」の手段を合法的に保障する法律を作る運動をするとかしたほうがよさそうですね。
DVや虐待がなくならない理由の一つは、 加害者がお仕置きらしいお仕置きを受けないことにあるんですから、そういう法律、あったほうがいいんです、たぶん。
なお、生活保護法改正案がどれほど強烈な欠陥法であるかについては、「ダイヤモンド・オンライン」に執筆した拙記事
「生活保護法改正案は「欠陥法」!?
元ケースワーカーが語る水際作戦の恐るべき実態 」
もご参照ください。
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「生活保護について理解するために、本を一冊読みたいんだけど」という方のために書いた拙著です。
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