白血病との闘いを続けている京大大学院生・山口雄也さん(Twitter: @Yuya__Yamaguchi)のご著書、『「がんになって良かった」と言いたい』から基本は1節ずつ抜き書きして、自分のメモを記すシリーズ、番外編その3です。



2週間の中断と、嬉しいできごと

 5月下旬から、2週間ほど中断していました。全力を振り絞って取り組むべきことがいくつか続き、その後はしばらく脱力していました。

 山口さんの病状は予断を許しませんが、私が全力で取り組んだり脱力したりしている間に、素晴らしい展開がありました。5月31日、衰弱して全介助となっていた山口さんは、歩行器を使いながら歩行訓練に取り組むことができたということです。オバハンは、動画を見て涙ぐんでしまいましたよ。




 抜き書きと感想を再開する前に、気になることを2つコメントしておきます。


1. 長期闘病、これでいいのか?

 山口さんは、がん患者であり、今は白血病患者です。それは確かなのですが、24歳の青年であり大学院生でもあります。退院後の生活があり、寛解後の人生の長い歩みがあるはずです。でも医療者たちに、そのことへの充分な理解と配慮があるようには見えないのです。
 過去と今と未来の本人の人生と社会とのつながりを視野に入れて「まるっと」支援することは、医療の役割ではないのかもしれません。医療者は、「病気の治療以外はどうでもいい」と思っているわけではないけれども、とても手が回らないのかもしれません。私自身、「どこの誰ならそういう支援ができるのか」と聞かれても、思い当たる機関や人はいません。本人や家族や、本人の所属する大学などの部分社会や、本人の行く末やライフプランを、ちょっと上から目線で「まるっと」支援するような立場の機関や人は、実はいない方が良いのかもしれません。
 しかし、あまりにも、「病人」「病気」だけがその他の世界から切り離されているように見えます。そのことは、山口さんのストレスを増すことはあっても、減らすことはないのではないかと思います。

2. 本人のメンタルヘルスに関して、本人を治療するしかないのか?

 前項と関連して、もう一つ気になることは、山口さんのメンタルヘルスが悪化した時の医療者の対応です。
 19歳でがん患者となり、いったんは寛解したものの子どもを持てないかもしれない状況となり、白血病となり、病状は深刻になっていく一方。大学院の同級生が「就活」する時期に「終活」に直面しているわけです。山口さんは十分すぎるほどメンタルが強いと感じていますが、それでも苛酷すぎる状況というべきでしょう。そして山口さんは何回か、メンタル面の危機に遭遇しています。
 山口さんのメンタルが崩れると、精神科医が精神医療的にアプローチします。具体的には、「不安焦燥が強く現れるうつ状態」という診断に基づいていると思われる向精神薬の投薬とか。「身体が弱っているところに、この薬飲んだら、副作用がキツいんじゃないかなあ」とか思ってしまいます。

 もっと正直に言っていいですか? 
 山口さんのメンタルが崩れて精神医療が出てくるたびに、私、「ああまたか」とうんざりしています。山口さん個人が十分な配慮を受けているとは思えないことに対する「ああまたか」でもありますが、身体疾患でストレスフルな状況にある患者が「想定内」の結果としてメンタル面が崩れた時、「本人に向精神薬を飲ませる」という精神科医としては当然かもしれないアプローチへの「ああまたか」でもあります。
 私、向精神薬を否定するつもりはありません。便利な道具の一つです。私も使ってますよ? でも、環境調整、周囲との関係の調整、そのために本人に面接療法でのアプローチを行うこと、その結果を踏まえた関係調整や環境調整が本筋なのであり、「薬もあったほうがいいね」という場面で薬がはじめて登場すべきなのではないですか?
 「本人が」荒れていて暴言を口にしていて不穏なツイートをしているから、「本人に」向精神薬を飲ませて解決するというアプローチに未だに疑問が持たれていないことに、私はうんざりしています。ああまたか。
 新型コロナ感染症だけでも大変すぎる今、「すぐに!」と言うつもりはありませんが。

 抜き書きでは今後、そういったことも述べていこうと思います。
 「ちょっと、何言ってるんだかわからない」という方は、wezzyの連載『メンタルヘルス事件簿』も読んでね。

山口雄也さんを応援する方法の例

 ご本人やご家族のために何かしたいというお気持ちを抱かれた方は、どうぞご無理ない形で応援をお願いします。ご家族を間接的に支えることも、ご本人への支えになります。
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  • 献血をして、献血センターがいかに素敵な場所であるかをSNS等で述べる(山口さんは、治療に大量の輸血を必要としています)
  • 献血できない人は、日赤などによる献血のお願いをSNS等で拡散する
  • 重い病気と闘病する人々やその家族の心境について、信頼おける書籍を読み、傷つけることなく支援する方法へと近づく