「新聞」の形にまとまった「新聞」は、時代遅れでしょうか?

 今は、東京新聞電子版を購読、朝日新聞デジタルの有料会員にもなっています。あと1紙だったら日経新聞、もう2紙だったら毎日新聞と読売新聞のどちらか。現在のところは、東京新聞電子版を朝刊だけ紙の新聞のフォーマットでチェックし、疑問を感じたら国内外のニュースサイトで関連記事を読んでみています。

 というわけで、本日2020年8月1日の東京新聞朝刊からの、独断と偏見にもとづくピックアップです。note記事の下書きも兼ねています。

  • 長い梅雨…7月の日照 戦後最短(1面)
サブタイトルは「野菜高騰 暮らしにも影響」。2020年7月の日照時間は東日本で平年の 37 % 、西日本で 49 % にとどまりました。統計が始まった1946年以後、7月としては最短です。その一方で、7月の降水量は東日本・西日本とも平年の2倍以上の 232 % に達し、統計史上最多となりました。小さい記事ですが、第1面に載るべき重大ニュースです。

  • 世界の異常気象の原因(みんなのニュース)
長い梅雨と令和2年7月豪雨は、世界で続く異常気象と関係しています。重要なニュースの背景を平易な日本語で(漢字にはよみがなをつけて)解説する「みんなのニュース」では、「インド洋ダイポール現象」が解説されています。発見したのは東大名誉教授の山形俊男さんということ。インド洋の東と西の2つの極(ダイポール)で海水温などが上がったり下がったりする現象です。解説はJAMSTEC(海洋研究開発機構)副主任研究員の土井威志さん。このインド洋ダイポール現象が、2019年から2020年にかけての記録的な暖冬の原因です。今年春から夏にかけての長い梅雨と豪雨の直接の原因というわけではありませ。しかし、生きて暮らす環境を大きく変える重大な現象は、他にも数多くあります。気象災害が来てしまってからの備えは、命を守るために極めて重要です。しかし、来る前の心と知識の備えは、漠然とした不安と”想定外”を、少しずつ「来たら困るけど”想定内”」に変えることにつながるでしょう。
  • ふくしまの10年 雪が落とした災い 第5回(2面)
東日本大震災の10周年を控えて、地味に続けられている連載「ふくしまの10年」。現在は、福島第一原発から30km以上離れていたにもかかわらず、放射能汚染によって全村避難を余儀なくされた飯舘村の2011年3月末のようすです。同年3月15日の雨と雪によってもたらされた放射性物質が、村と人々と牛など多数の動物たちの運命を変えることになりましたが、3月29日、村に残りつづける可能性への期待は絶たれようとしていました。雨と風を運ぶ風向きは、人間の力で変えられるものではありません。
  • プルトニウム 消費目処立たず 安全面だけではなくコストも破綻(特報面)
原子力は、現在進行中の問題でもあります。青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場の安全対策は、国の基準を満たしていることが認められたばかりです。本当に安全なら良いのですが、不安を感じさせるトラブルが続発しています。また、十兆円以上のコストも問題です。そのコストで安全性が確保されつづけるのなら良いのですが、足りなくなりそうです。足りなくなった場合、結局は国民が税金や電気料金で穴埋めすることになります。現在、中間貯蔵されているプルトニウムには、それ以上は「再処理」の形で手を加えず、映画『100,000年後の安全』に描かれたフィンランドのオンカロ・プロジェクトのように最終処分場を作るべきだというのが専門家たちの主張です。実はこの問題、私が東京理科大に入学した1984年にはすでに表面化しており、入学早々、学内で開かれた槌田敦さんの講演会でも、同じ結論が述べられていました。原子や分子を含めた自然様は、人間や政治の都合では動いてくれませんからね。
  • 野宿者に届かない「10万円」 「住民登録」不条理な壁(特報面)
プルトニウムと六ケ所村の再処理工場の記事の隣に、野宿者が10万円の特別定額給付金とならないことに関する記事があります。総務省は結局、「住民登録がないとダメ」という結論を覆していません。野宿者は、高架の下や河原や公園に「住んで」いるのですが、そこを住所として住民登録をすることは認められていません。このため、選挙権もありません。野宿になる前に住んでいた地域に住民登録が残っていれば、10万円を受け取ることができるのですが、登録が抹消されていると受け取れません。支援を続けている越智祥太医師は、「運に左右されるような不公平は許されない」と述べています。私自身は、長く路上生活を続けている方のお話を聞いた経験は非常に少ないのですが、特に男性の場合、「国のエネルギー政策に翻弄された人生」としか言いようのない事例が少なからず見られます。

  • 都、休業要請拡大も 「緊急事態」に再度言及(第二社会面)
新型コロナの感染が再び拡大し、今年3月から4月よりも患者数が増えているため、東京都は再度、休業要請を発しています。また、都独自の「緊急事態宣言」の可能性も取りざたされています。2月に始まった「自粛」の嵐の際も、4月の緊急事態宣言の際も、減給や失業への公的支援は遅れたり少額すぎたりしました。国や地方自治体は、「強制ではないのですが」と言いながら、休業や営業縮小を事実上強制しているわけですが、弁護士の平裕介氏によると、「自粛と補償はセットだろ」は法的に正しいということです。日本政府が、「国として、新型コロナ感染症を抑え込むために”おこもり”お願いします。そのための費用は出しますから、安心して”おこもり”してください」という当たり前の行動を当たり前に出来るようになるために、国民として何をどうすればよいのでしょうか。

  • 米経済 V字回復困難に(3面)
新型コロナ対策に関して、現在の米国はカンペキに”反面教師”です。州や市単位では、ニューヨーク州やニューヨーク市をはじめ、「あんな悪条件の中で、満点ではないけれど素晴らしい」と思える自治体もあります。しかし米国全体を見ると、経済活動を重視するあまり、感染が再拡大してしまっています。4月から6月にかけての経済の落ち込みは前年比でマイナス 33 % 。統計が開始された1947年以来最悪、大恐慌に近いレベルです。失業者も増える一方です。その背景は、次期大統領選を控えたトランプ大統領が経済活動への期待に応えようとしたことです。

  • 本音のコラム「私たちは捕虜を殺さない」師岡カリーマ氏(特報面)
その米国では、7月14日、連邦レベルでは17年ぶりの死刑が執行されました。トランプ大統領の支持率向上を狙ったものと見られています。米国で処刑された元死刑囚は、最後まで容疑を否認していたそうです。米国連邦政府は「遺族の悲しみに終止符を」と理由づけていたそうですが、遺族は処刑ではなく終身刑が適切だと主張していたということです。私はこの処刑についてあまり関心を向けていなかったのですが、師岡さんのこのコラムで、あわてていくつかの報道を探してみました。米国の死刑執行は、通常は事前に告知され、弁護士や被害者遺族(場合によっては加害者遺族も)やメディアが立ち会うものなのですが、そのような手続きはなく、夜間に最高裁が死刑執行を認め、真夜中に処刑がおこなわれたとのこと(CNN記事)。2019年7月、オウム真理教の元幹部13名の処刑が執行された際には、人数が「異例」とされましたが、今回の米国の死刑執行も「異例」づくしのようです。師岡さんは、いわゆる「遺族感情」を焦点化し、遺族に代わって国家が行う代理復讐としての死刑について、考えさせる視点をいくつも提示しています。死刑をはじめ、激しい論議を呼び起こすものごとについては、「国民感情」「市民感情」「遺族感情」という用語がしばしば持ち出されます。しかし、遺族ではない第三者が「遺族感情」を持ち出すことは許されるのでしょうか?「国民感情」「市民感情」の「国民」や「市民」とは、いったい誰なのでしょうか?
  • ファーウェイ 初の世界首位(6面)
最後に、小さいけれど世界のもろもろに「ははあ」と納得を与えてくれる記事を1つ。米国と中国の間では、ICTとハイテクをめぐる抗争が続いています。1980年代の「日米半導体摩擦」をリアルタイムで知っている私としては、「こんどは中国なのねー(棒)」だったりします。当時、日本の技術者が産業スパイとして米国で逮捕された事件もありましたよ。それだけ米国の危機感は強いということでしょう。特に中国のファーウェイに対しては、米国は多様な理由で制裁措置を重ねてきています。しかし2020年4月~6月の世界のスマホ出荷では、ファーウェイが 20 % を占め、トップとなりました。今後、制裁がEU諸国に広がる可能性、また米国やEUからの電子部品の供給が断たれる可能性も述べられていますが、米国もEU諸国も、むしろ中国の巨大な顧客に買ってもらえなれば困る側です。中国という巨大な国内市場をベースに持っている強みもあります。

新聞は、まだまだ捨てたものではない

 朝刊にザザっと目を通せば、季節の野菜の価格と料理法、新型コロナ情報、注目の新刊、スポーツにファッションに芸能、地域や国内の政治、そして海外の動きまで、一通りつかむことができます。人間が発明してきた紙と印刷、その中で発達した編集とレイアウトの技術は、まだまだまだまだ有効で大変役に立ちます。
 東京新聞は、電子版だけなら一ヶ月3450円。1日100円と少しです。他の新聞があまり報道しないけれども重大な課題を継続して報道することに、特に強みを発揮しています。「東京」に偏るのが難ではありますが、おすすめできます。