中学生対象の学習塾の塾長やってる友人(予備校時代の同級生)が、音楽の先生ではないのに、毎夏、生徒さんたちの夏休みの音楽の宿題指導に悩んでます。
「16小節から24小節のメロディーをつくる」という課題です。

実はこれ、けっこう難しい。
「土台も家の本体もないけど、家の屋根を作りましょう」
というのと似てます。無理ですよね?

そんなわけで、友人と生徒さん、ならびに全国の小中学生・保護者・指導者の方々のために、良く知っている大好きな曲を参考にして、その宿題を楽しくこなす方法をまとめてみました。
リンク先は楽譜です。左上の再生マークをクリックすると、音が出ます。
難しく考えないで、音を聴いてみてください。聴けば「そういうことか!」とわかりますから。
(でも、楽譜の読み書きがハードルになってる方のために、読譜講座も作らなきゃね)

  • 基本 音楽の「土台」、ハーモニーはどんなふうにできているか
実は、和音の種類は3つ、和音の進み方=ハーモニーは3パターンしかありません。
和音の3種類は「トニック(T)=ふつう」「ドミナント(D)=びしっ」「サブドミナント(S)=ふわっ」。
進み方のパターンは
「TDT」
「TST」
「TSDT」
の3種類だけです。

「トニック(T)=ふつう」は2種類ありますが、曲の終わりには「ドミソ」が来ます。
「ドミナント(D)=びしっ」は2種類
「サブドミナント(S)=ふわっ」は2種類あります。

「TTTDT」「TSST」「TTSSDDDT」というように、同じ種類がずらっと続くこともありますが、同じ種類をまとめてみると、「TDT」「TST」「TSDT」のようになります。
一つの曲は「TDTSTDT(これで、文部省唱歌「春が来た」全部)」のように、この3パターンの進み方を組み合わせてできています。
「ふつう」からはじまって、「びしっ」と緊張したり「ふわっ」とリラックスしたり、ちょっと「ふつう」になったりを繰り返して、盛り上がって盛り下がって、最後は「ふつう」で終わります。
これがだいたい、音楽の土台、ハーモニーの基本全部です。

  • では応用 自分の曲の「ハーモニー」をつくる
基本はこんなに簡単なのですが、「では16小節の曲を」と言われても、いきなりは無理でしょう。
良く知っている曲から、ハーモニーのパターンだけをいただいてきてみましょう。
私は「ようこそジャパリパークへ」に尊敬をこめて、16小節分、いただいてきてみました(これはまったく盗作にはあたりません。歌詞の著作権は……ちょっと……かなり……気になりますが、引用の範囲じゃないかと思います。実はこういう問題、ギリギリのところは、裁判などの争いごとになってみないと判断つかない)。
ハ長調の「ようこそジャパリパーク」、ハーモニーを聞きながら歌ってみてください。
歌詞に、その和音が「T」「D」「S」のどれなのか書いてあります。見れば、なんとなくわかると思います。
歌のメロディーが、こういうハーモニーの土台に乗っているわけです。

16小節分のハーモニーが出来たところで、その和音の上や下に音を増やして「みっちり和音」(たとえば「ドミソ」を「ソドミソド」)にすると、メロディーを考えるための音セットができます。作ってみました。
この音セットから、「小さく盛り上がって盛り下がって、大きく盛り上がっておしまい」という形になるように音を取り出すと、それだけで、簡単なメロディーがつくれます。
1段階目(ハーモニー=音セット からメロディーを取り出してみた)
2段階目(ハーモニー=音セット がうるさいので、消してみた)

メロディーだけで音を確認してみて、「おかしいな」「キモイな」と感じるところをなくして気持ちよさを目指してみると、こうなりました。
実はもう、これで「はい、16小節のメロディー作る宿題、できた!」です。できてますよ?
ただし、この状態で提出すると、先生に怒られるかもしれません。
もう少し頑張ってみましょう。

  • 仕上げ 「音セット」から音を取り出して、自分で「ちょっといいかも」と思うメロディーに
さきほど、うるさいので一度消した音セットを、もう一度参考にします。
ここから音を拾い出せば、土台の気持ちいい16小節のハーモニーに、気持ちよく乗るメロディーができます。
実際にそうやって、メロディーを作ってみました。

調子にのって、伴奏もつけてみました。ジャパリパークに夕日は沈む。
この伴奏も、音セットから音を拾うだけで出来てます。


それでは、夏休みの宿題に向き合う小学生・中学生のみなさん。
保護者・指導者のみなさん。
どうぞご健闘を。